2025年10月13日月曜日

吉野本葛

    秋の七草にデンとおさまっていることに、いつも首をかしげている。葛(くず)のことである。
 空き地の草刈りが済んでもひと月もしないうちに生い茂る。
 最寄りの駅のプラットホームの向こう側は以前は立派なツツジの生垣だったが、もう葛がツツジを覆いつくしてしまった。
 宮崎駿監督のアニメでは人間が何かに敗れた先にはその土地を蛇のようなツタが茂っていくが、あの種の絵を、乾燥したヨーロッパあたりの人はどう思って観ているのだろう。
 どう見ても雑草の雄である。
 この雑草の根から本葛が作られる。京都や金沢の高級和菓子に使われたり漢方薬の材料になる。
 吉野本葛黒川本家の御主人の講演を受講した折には、本葛の料理や、谷崎潤一郎の執筆余聞や、昭和天皇最後の料理のことなどの質問の中で私は、「葛の根を掘るのに縄張りはあるのか」と質問して多くの人を驚かせた。他人の土地で勝手に収穫してもよいものか、もしそうなら葛掘りに挑戦してみたいなどと思ったからだった。しかし実際には挑戦していない。

 さて新聞で知ったことだが、「高校生ビジネスプランコンテスト」で奈良の吉野農業高校の生徒が葛の栽培法を確立して、応募297組の中、優秀賞・地域部門賞を受賞した。
 あの葛である。有害雑草の代表みたいな葛を栽培しようと考えたのは驚いた。
 既成概念しか思い浮かばない凡人では面白くない。この農高生に拍手を送る。そこで一首。

   雑草の王者葛の根栽培す農高生の挑戦実る

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