西宮戎(兵庫県)と今宮戎(大阪府)は親子というか兄弟というか非常に親しい間柄で・・・、同じ攝津の国の中で10数キロしか離れておらず、何れも正月の十日戎の賑わいは有名。
ところが今宮戎(の十日戎)で育った浪速っ子は、西宮戎(の十日戎)に行くと「ええー。これが“戎宮総本社”のえべっさん?」と二つのことで驚きます。
その一つは、十日戎と言えば「商売繁盛で笹持って来い。今年の恵方はここだっせ。」と、ケタタマシイほどに境内がウルサイ筈のものが、西宮戎ではただ普通の寺社のように吉兆(福笹)を売っているだけであることに拍子抜け。
今宮戎では、膨大な量の笹が参拝者に配られ、文字どおりその笹を持って福娘や巫女のところで吉兆を付けてもらう(もちろん有料)のがスタンダード。これでこそ「商売繁盛で笹持って来い。」になるわけです。
その二は、西宮戎には裏口がないので戸惑うこと戸惑うこと。
今宮戎では「えべっさんは難聴」と固く信じられており、裏に回って裏口(今は大きな銅鑼のようなものがある)をドンドンドンと叩いて、「何処其処の〇〇でっせ。〇〇の願い事どうか頼みまっせ!」と大声で頼まないと全くご利益はないというのが常識。(正面の拝殿は遠すぎ、参拝客が多いのでえべっさんは各自の願い事を聞き取れない・・・故に、正面だけ詣ったのでは賽銭は無駄だ・・というわけ)
まるで吉本新喜劇のようだが、浪速っ子はこの“えべっさんにハグをするような”スキンシップ溢れるお詣り方法が大好きなんです。これってケンミンショーになりません?
さて、なんで十日戎のことを今日アップしたかと言うと、今日は奈良の南市の(5日戎の)宵戎であったため「奈良ではどうかな」と確かめに行った次第。答えは、奈良は概ね今宮戎派。
ところが、境内で観察していたところ、17時に“5日戎開会の神事(宵宮祭)”が突然厳かに始まり、春日の神官、講の役員、そして膨れ上がった参拝者がお社に向かって粛々と・・・
私はというと、突然の開会にタイミングを逸し、ただ一人境内のお社側に取り残され、神事の会場を突っ切って出て行くわけにも行かず、で、皆さんと対面したまま・・・大勢の「あのおっさんは誰やろう」という猜疑の眼を一身に浴びたまま・・・(背中にドット冷や汗・・・)
こうなったら仕方がないので、まるで浅見光彦みたいなルポライターが取材しているかのような風をして・・・当然のような顔で大祓詞(おほはらへことば)を神官と一緒に“恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まお)した・・
ああ、今年もこんなドジでトンチンカンな一年になるに違いない・・と、今日100%確信した。
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旧遊里の奥にある |
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結構な賑わい |
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笹は本物だが買い求める |
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裏戸を叩く |
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突然始まった神事 |
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裏戸でもう一度念を押す |