この原稿はお彼岸の中日におはぎを食べながら書いている。 記録的な残暑の日々だが、空の方ではモズが高鳴き、地面には彼岸花が咲いている。彼らの「体内時計」の正確さには舌を巻く。
さて、モズと彼岸花の次に秋の主役と言えばサンマだろうがこちらは記録的な不漁が続いている。
海水温が上昇してサンマの回遊コースが日本列島から離れているからと聞く。
外国漁船が先に獲ってしまっているという宣伝は統計数値などからは的外れらしい。
それよりも内外を問わず「育てて獲る」漁業でなく「根こそぎ獲る」漁業の風潮は問題ではなかろうか。
「育てて獲る」沿岸漁業は普通の漁師の漁業だが、まき網漁業などの「根こそぎ獲る」のは桁違いに大きな船による資本主義的漁業である。
そういうものを「効率」などといって政府が推奨しているのは良いことだろうか。一概には言えないがマグロなども含めて「これでいいのだろうか」という疑問が湧くが、浅学のためそれ以上はよくは頭が整理できていない。
なお、You Tube に小池晃氏が沿岸漁業の漁船に乗って実際の漁に出て学んでいるのがあるが、非常に好もしい。それはさておき・・
その不漁のサンマだが、イオンの売り場で見るそれは値段が高い上に非常に小さい。
私は生協で購入したが、イオンほどではないがやはりそれほど大きくはない。
各国と友好的な外交を展開して、地球規模で「育てて獲る」漁業をしてもらいたいものだと感じているが・・・。
さてさて、先日ラジオで比較的「言葉」に一家言あるパーソナリティーが、その日のゲストが「祖母?がサンマのことをサイラと言っていた」と言ったのに対し「その祖母?さんが聞き間違えて言っていたのではないか」と返して語ったのには少しあきれ返った。
パーソナリティーは熊本出身ではあるが京都の大学に行き、そのまま大阪の放送局のアナウンサーとして働いてきて、全国的な言葉の「委員会」の委員でもあったらしいのに、「それはないやろ」と私は思った。
全国方言辞典に、【サイラはサンマ。大阪、三重、奈良、和歌山、兵庫県佐用郡、淡路島、岡山県津山、香川、徳島】と、大阪ことば事典にある。【ひょろひょろとノッポの漫才師林田十郎のあだ名】ともあった。
大阪高麗橋で生まれ船場で育った私の祖母もサイラと言っていた。だから私もサンマのことをサイラとも言うことは当然に知っていた。
消えゆく大阪弁だから若い人が知らなくてもよいが、大阪の放送に携わるものなら、「・・と言っていた人がいた」と聞いたなら「聞き間違いだろう」などと切って捨てず、とりあえず調べてもらいたいものだ。
なお、サイラこと林田十郎は、雁玉・十郎の十郎で戦前から戦後初期の文字どおり大御所だった。
さすがに小学生だった私は、ラジオから街中に流れていた浪曲の広沢虎造の名前ぐらいは知っていたが、雁玉・十郎の漫才は記憶に残っていない。ただ、親たちが「雁玉・十郎」と世間話をしていたことは覚えている。
十郎は昭和33年に脳出血に倒れているから、その頃のことで、つまり、その頃の大阪・JOBK周辺ではそのあだ名「サイラ」が「サンマのこと」というのは当たり前の共通認識だった。
先のラジオを聴いていて、そんなことをチョット書いてみたくなった次第。
カットのイラストは成瀬國晴著『なにわ難波のかやくめし』にあった成瀬画伯のもの、この本には林田十郎のことがいろいろ書かれているがそれはまた別の日に。