コロナの問題で新聞やテレビを見ていてももひとつ胸に落ちない。
首相や都知事や府知事が演説をしても何か白々しい。
2か月かかって首相がやると約束したのは「各住居に2枚の布製マスク」。それは山口県の会社で首相のFB友達が社長らしい。
国民がいろいろ考えるにしてもデータが限られている。
そんなもので朝日新聞のデータを基に何回か書いてきたが、分かったことは日本の感染者数は重症者数に近い。死者数にも漏れているものがありそうだ。
そのように「隠れ感染者」が相当数居て爆発する危険性がある。
一方、死者数は今のところ相当数抑えられている。・・・ということだ。
なので、各国の状況を見るだけでなく、山を越えたように見える韓国、必死の抑え込みができていそうなドイツ、そして医療崩壊を生じているイタリアに的を絞って検討しようと考えた。が、ネット上を検索してもこれといったデータはほんとうに見つからない。
と困っていたら、私の問題意識とぴったり合う、真野俊樹(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師)の見解表明が見つかった。アドレスは次のとおりだが、念のため、コピーを表示する。
私自身は門外漢の一市民だが、説得力のある見解だと考える。(ただし、文末に記すような異なった意見もある)
https://diamond.jp/articles/-/232537
コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由
真野俊樹:中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師
(ライフ・社会
DOL特別レポート2020.3.24 5:37)
なぜ、イタリアではこれほど死亡者が増えてしまったのか
欧米で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。特にイタリアでの死亡者は発生源の中国を上回るほどのひどい状況となっている。なぜ、イタリアではこれほど死亡者が増えてしまったのか。将来的に日本はイタリアのような状態になりうるのか。医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで医療経営を教えているという立場の筆者が各種データに基づき、「日本の今後」を予想してみた。(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師 真野俊樹)
イタリアで新型コロナの死亡者が増えた原因
なぜ、イタリアがこんなことになったのだろうか。
そもそもイタリア北部では1990年代以降、中国人の移民が急増していた。運悪く年末から、1月下旬に始まる中国の旧正月である春節休みの時期に、中国系の移民が中国とイタリアとを行き来し、感染の引き金を引いたという説が有力視されている。
筆者はその説を正しいと考える。ただ、それは「感染が広まった理由」の大きな要因なのかもしれないが、重要な指標である「死亡者数」や「死亡率」の説明にはならない。
イタリアについては、他にも、日本に次いで「世界2位の高齢化国」であるという事実もある。
それでは「世界一の高齢化国である日本ではどうなんだ」という話になり、これも死亡者数が多い理由を説明できない。
そこで、筆者は医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで医療経営を教えている立場から、日本の今後を予想したい。各国比較のデータは、すべてOECD(経済協力開発機構)の2019年版から引用している。
最近、メディアでよく聞くのは「医療崩壊」という言葉である。医療崩壊という言葉に厳密な定義はないが、ここでは、「患者が医学的に必要な措置が生じた際に入院できない、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」を指すと定義しよう。
つまり、患者数に対して、医師の数が不足していたり、病院(病床数)が不足していたりすることである。
ちなみに、ここでは単なる感染者数は、各国ごとの検査に対しての「考え方」が異なるために、比較の材料としては使用しない。あくまでも、死亡者数や人口当たりの死亡数の多さについて、比較・検証していきたい。
イタリアでは発症から死亡に至るまでが早すぎる
まず、イタリア国立衛生研究所が公表した文書によると、感染者の症状発現から入院するまで4日間かかり、さらに4日後に死亡する、という発症から入院、死亡までの異様な早さが目に付く。
死亡者の平均年齢の中央値は80.5歳で、感染者の場合は63歳だという。いくら高齢者とはいえ、わずか8日で死亡というのは早すぎるという印象がある。
これは患者が必要十分な医療を受けられていない状態、いわゆる「医療崩壊」が間違いなく、生じていると考えられる。
実際、2020年3月22日のデータにおいて、イタリアでは感染者数4万7021人、死亡者数4852人、人口当たり死亡率0.008%(以降人口は外務省基礎データで計算)と死亡者数が多い。
他のEUの国でもドイツでは感染者数1万8323人、死亡者数が45人と少なく、人口当たり死亡率0.00054%で、ドイツの感染者数はそこそこ多いが「医療崩壊していない国」とされる。また、韓国は3月12日の感染者数7476人で、ピークアウトしたといわれている。
しかし、1カ月前は全く状況が異なっていた。
韓国とイタリアでは同じように2月20日前後に患者が急増している。3月9日にはWHOの数字によれば、両国とも感染者数が7000人を超えている。詳しく述べれば、3月9日はイタリアの感染者数は7375人、死亡者数は366人、韓国は7382人で、死亡者数は51人である。
つまり、両国においてはここからの経過がまったく異なっており、3月22日現在、イタリアは感染者数が5万3578名、死亡者数は4825人、韓国の感染者数は8697人で、死亡者数は104人にとどまっている。
感染者数においては国ごとの対応が異なったりする場合や、手洗いなど生活習慣の差などがあろうが、死亡者数に鑑みて一言で言えば、韓国は医療崩壊を免れてピークアウトしたといえよう。
感染者数激増の韓国がイタリアのようにならなかった理由
ここで韓国とイタリア、ドイツの医療提供体制において3カ国を比較してみよう。筆者はイタリアについては、現地調査に行ったことがない国なので、もしかしたら誤解があるかもしれないが、すべてデータに基づいて考えてみたい。
まず特徴は、3カ国とも国民皆保険の国であるということである。イタリアは100%国民皆保険の国であり、ドイツは収入の多い一定層は国の保険に入っていないため国の保険制度への加入は89.4%であるが、その代わりに民間保険に加入することが義務付けられているので実質は100パーセントといっていい。韓国、日本も100%国民皆保険の国である。その点において、同じく感染者数、死亡数が急増しているアメリカとは全く異なる背景を持つ。
そうなると、比較のポイントとして、病床数(特に重症な患者を扱う急性期病床数)、医師数、そして医療レベル、付随的に、医療費といった視点で評価したい。
◎イタリア、ドイツ、韓国、日本との医療データの比較
平均 ベッド数 ベッド 急性期 医師数 脳卒中
在院日数 (人口1000 占有率 病床 (人口1000 死亡率
人当たり) 人当たり) (人口10万人当たり)
イタリア 7.8 3.2 78.90% 2.8 4 62.2
ドイツ 8.9 8 79.80% 6 4.3 46.1
韓国 18.5 12.3 ― ― 2.3 56.1
日本 16.2 13.1 75.50% 7.8 2.4 46.1
※OECDなどのデータを基に筆者作成。急性期病院の比率のみは、2017年のOECDデータによる。韓国の急性期病床の「―」は約7.5 拡大画像表示表を見ていただきたい。
最初に韓国である。韓国については3月13日前後の各メディアの報道を見ると、「PCR検査を拡大したために感染者数が一気に増えて医療崩壊した」という指摘が目立ったが、それは一時的な現象にとどまり、最終的には医療崩壊を起こさずにピークアウトした。その理由は何か。
一つはイタリアよりはるかに多い豊富なベッド数である。OECDのデータからはわからなかったが、筆者の過去の調査では、韓国では急性期の医療が中心であり、ベッド数の60%以上は急性期ベッドで、日本とほぼ同じ比率である。急性期病床の占有率(利用率)は10%ほど高いと思われる。その点で病院の余力は少なく、医師数もヨーロッパよりは少ないが、乗り切ることができている。
おそらく、医師の過重労働という点では、ヨーロッパの病院よりもひどかったかもしれないが、新型コロナ感染者のすべてがICU(集中治療室)に入院するなどの重症者ばかりではないということから考えれば、とりあえず入院させて隔離したりすることができたことが、ピークアウトの大きな要因ではなかろうか。
結核の感染病床でも医師の高度な治療が常に必要なわけではない。隔離して感染を防ぎ、重症化しそうな時にすぐに介入することができることが重要であろう。
ドイツはなぜ死亡者が増えていないのか
さてここで、おなじEUの国として似通った医療体制を持つイタリアとドイツを比べてみよう。ほぼ同じようなトレンドで片方が医療崩壊、片方がピークアウトという対照的な動きをしたイタリアと韓国と違い、イタリアとドイツは感染者数が増える時期が異なっており、ドイツでさえ現状ではピークアウトしていない。
イタリアとドイツの「決定的な差」が何になるかといえば、やはり病床数と医療のレベルということになろう。ドイツに比して、イタリアは病床数が半分以下である。
そして付随的な対GDP比当たりの医療費も異なる。イタリアは8.8%に対し、ドイツは11.2%である。この費用の差から考えれば、医師などの待遇や病院の設備という点で、ドイツはイタリアよりすぐれていると考えられる。
病床の利用率や平均在院日数にはあまり差はないので、病床の余力としても大きな差がないと思われ、正確にいえば、このような急性期の治療を行うための「急性期病床数の差」ということになるが、ここにおいてもドイツとイタリアの病床数差は大きい。
つまり、病床率の差が、医療崩壊の定義となる「患者が医学的に必要な措置が生じた際に入院できない、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」に直結したと思われる。
次いで医療レベルである。先述したように、筆者はイタリアに直接病院や医療関係の調査に行ったことがないので医療のレベルを正確に判断する立場にはないが、一つの例として「脳卒中の死亡率」を取り上げてみたい(前掲表参照)。
この差を見ると、急性期の疾患において、やはりドイツの方が医療レベルは高いとみた方がいいであろう。
もう一つの重要な要素となる「医師数」においてはイタリアとドイツはあまり差がない。これはヨーロッパには比較的、医師数が充実している国が多いということによる。
もちろん、ドイツは感染者数が少ないから、「現状では医療崩壊するわけがなく、今後はどうなるかわからない」という批判はあり得る。
これまでの状況に鑑みれば、イタリアや韓国の感染者数が7000人を超えた3月9日に、ドイツは1112人で死者数は0である。ドイツで感染者数が7000人を超えたのは3月18日であり、その後3月22日には上述したように感染者数1万8323人だが、死亡者数が45人にとどまっている。
ということから考えると、感染者数がイタリア同様に多いドイツであっても、現在医療崩壊を起こさずに死亡者数が少ないのは、病床数が行き届き、医師数が充足しているからだと考えられる。
もちろん現場の医師が過重労働になったり、イタリアでは医師会長が新型コロナウイルに感染して死亡し「殉職」ともいえるような亡くなられ方をしたという話も聞いている。医師の「充足」とはあくまで数の問題のことだけであり、冷たく聞こえる点はご容赦いただきたい。
さらに、3月18日以降感染者数が激増していることを考えれば、病床数が少ないことを考えれば、確かにドイツでも今後が不安ではある。
日本での死亡者はイタリア並みに増えるのか
さて、ここで日本の将来を考えよう。
実は筆者は「日本では医療崩壊は起きない」と考えている。医療崩壊を起こさないという理由は医師数や病床数、特に病床数に余裕があるということである。
日本はドイツよりも、病床数は圧倒的に多く、韓国と同程度である。少ないのは医師の数であるが、これも韓国とほぼ同じである。また病床の空床率は韓国より高いので、余力もある。対GDP比の医療費のかけ方も韓国は8.1%なのに対し、日本は10.9%である。
また、新型コロナウイルスの診断に重要な役割を果たすCTの台数は人口当たり世界一である。
もちろん、慢性期の病床であれば“急性期へ転用”ということも考えねばならないが、諸外国で「ホテルを病床で使おう」という話まで出ていることに比べれば、日本の優位はゆるぎない。
ただし、感染者数が爆発的に増え、韓国のピークをはるかに超え、現在のドイツのように2万人近くになった時に医療崩壊が起きないという保証はない。
東京都知事が「首都のロックダウンもあり得る」と発言したように、決して「油断はできない」という事態であることは、強調しておきたい。
その意味では、「またか」といわれるかもしれないが、手洗いの励行に加え、「密閉・密集・密室」における他人との濃厚接触を避けるという努力は今後も続ける必要がある。
医療者と患者で一致団結し、この難局を何とか乗り切りたいものである。
(以上、引用おわり)
データは、OECD、厚労省、日本医師会等々を見ても微妙に異なっていて、門外漢には非常に理解が困難だ。
ただ、日本集中治療医学会理事長声明は、イタリアとドイツの死亡率の違いは集中治療体制の違いと述べ、人口10万人当たりのICU(集中治療室)のベッド数は、ドイツが29~30床に対してイタリアは12床で、集中治療を受けることなく多くの人々が亡くなっていると指摘。
その上で、日本は人口10万人当たり5床程度と、行き過ぎた行革等で医療体制が崩壊したと言われるイタリアのさらにその半分以下であり、日本の集中治療体制の崩壊は非常に早く訪れると予想される。さらには、人工呼吸器を扱える医師も少なくマンパワーも不足していると強調している。
日本医師会も同様に「医療危機的状況宣言」を発表した。
最後に、安倍自公政権は、このような新感染症などの最前線にあたる公立、公的病院を統廃合し、病床を20万床削減しようとしている。
心ある人々は、こんな政権を大きな声で批判しよう。
その上で、津波や台風などの自然災害で『正常性バイアス』のことが度々指摘されてきたが、この新型コロナウィルス問題では、為政者の「脅しのような政治発言」は横においても、少し臆病なぐらいに慎重である方がよいと私は思う。
ウィルスはヒトの力を試してる