奈良公園のハシボソカラス |
そんなこともあったので、奈良公園で少しじっくりと観察したが、ここのカラスは『鹿煎餅』の屑を食べたりしているせいか、我が家周辺でゴミステーションを睥睨しているハシブト(嘴太)カラス(ジャングルクロウ)よりは少し「人の好さそうな」ハシボソ(嘴細)カラスで、此方の気分のせいか可愛らしくもあった。
ハシブトとハシボソの違いは嘴を見ても判らず、オデコが盛り上がっているかどうかでわかる。
ただ、冷静に考えればこれはハシブトとハシボソの違いではなく、奈良公園のカラスが「観光客というのは比較的おとなしい」と学習したのだと思う。
だから、ベンチに座った私が投げる餌を、ハト以上に近寄ってきて啄ばむし、カメラを向けても平気だった。(通常の解説書にはそんなことはないと書いてある)
『烏合の衆』などという言葉があるがこれは全くリアルでなく、カラスは状況を判断して、人間を襲ったりもするが愛想よくもふるまう。
すぐ目と鼻の先にある先日の美術館には、柳原義達氏の『風の中の鴉』というブロンズ彫刻があった。(ブロンズ彫刻であるから各地にもある。)
私は形容しがたいパッションを感じた。
その風とはどんな強風なのだろう。
鴉は風の向こうの何を見据えて飛び立とうとしているのだろうか。
それを作者はどのように共感してこの作品を作ったのだろう。
・・・・それに比べて私の足元のカラスはなんと穏やかなのだ。
既成概念でモノを見てはならないと反省した。
繰り返しになるが、この作品、私は気に入った。
そして、私も日々このような姿勢で生きていきたいと、そんな風なことをザワザワと感じさせた鴉だった。