2024年3月24日日曜日

役小角

   役小角(役行者)に関する講演を聴きに行ったが実に詰まらなかった。
 
 私としては、後の修験道に発展する思想の根源、例えば道教の影響や、大宝律令下の僧尼令に服さなかった私度僧や、今も残っている大峰山周辺の多くの習俗など、いろんな興味を持って講演の席に臨んだが、講演は続日本紀や日本霊異記に書かれている文言の平板な紹介に終始した。実に詰まらなかった。

 ただ、唯一笑ったことといえば、日本霊異記の「孔雀王の咒法を修持して異しき験力を得、以て現に仙と作りて天を飛びし縁 第28」にある、「役小角が葛城の一言主神や鬼神たちに、大峰山と葛城の山との間に岩橋を架けよと無茶な命令をしたため、一言主神たちは反発して文武天皇に「役小角は天皇を傾けんことを謀る」と讒訴(でっち上げ)した」とあった講演に対して、参加者から「春日大社の末社の一言主社は受験を前に必死の祈願者で溢れているが、一言主神は役小角を讒言した信用ならぬ神ですか」という質問だった。

 これは、歴史や思想史ではなく「神学論争」だから、講師もムニャムニャで終わったが、この話が唯一愉快だった。
 私は、現実の社会に害を及ぼさない神学論争は笑って過ごすことにしている。
 各教祖たちの為した奇跡の矛盾を解明しても何も解決することはない。ただしカルト教は除く。

 ほんとうはこの日は、別に非常にまじめなWEB講演もあったので、そちらを選択しておけばよかった。反省だけが残った。・・こんな日もある。

1 件のコメント:

  1.  なお仏教説話集である日本霊異記は讒訴の結果「一言主神は役行者に呪縛せられて今に至るまで解脱せず」と述べている。
     神学から離れると、一言主神の呪縛は、古代の豪族葛城氏の没落を反映しているとの説もある。こういう話をほんとうは聴きたかった。

    返信削除