2024年10月20日日曜日

嘘はよくない

    神社本庁に事務所を置く神道政治連盟(神政連)が少なくない総選挙立候補者を推薦している。
 数名を除いては自民党の候補者だとネットに出ている。
 推薦条件の一つは「選択的夫婦別姓反対」の「公約書」の提出とあるから、推薦された立候補者はその踏み絵を踏んだ者である。
 テレビでは「やらない理由がわからない」(石破茂)などと言いながら裏では公約書(誓約書)を提出している候補者も少なくないようだ。

 さて、「選択的」であるから選択しない者は「同姓」で全く問題ないのに、反対論者は希望者に選択を認めると「伝統的な家族制度の崩壊につながる」と主張している。
 なので、「伝統的」と主張しているので歴史愛好者としては一言指摘しないわけにはいかない。

 テレビの大河ドラマでも明らかなように、歴史の長さをもって伝統的というなら、もしそうならこの国では歴史的には一夫多妻の時代が長かった。(伝統的家族制度を守れというなら一夫多妻制を主張しなければ論理は一貫しない)
 少し違う角度でいえば、頼朝の妻はかの有名な北条政子御台所で夫婦別姓であった。
 歴史をもっと手前に引き寄せても、大正天皇は明治天皇の昭憲皇后の子ではなく、柳原愛子側室の子であった。明治天皇以前の天皇は一夫多妻であった。
 これは正妻に対して側室がどうのこうのという話ではなく、まるで「同姓の一夫一婦が伝統的な家族形態であった」かのような嘘はよくないと指摘しておきたいのだ。婚外子をあれこれ言う気は全くない。

 重ねて言うが、同姓を望むものは同姓でよい。
 同姓と家族のつながりは基本的に関係ない。別次元の問題だ。
 こんな没論理的な理屈が通れば、神前で結婚を誓って同姓になったのに離婚するなんてことは許されないとの理屈だって出てきかねない。一部の宗教原理主義では今でもそういう主張がある。
 世界中でも、近代国家で夫婦同姓を法律で縛っているのは日本だけである。
 姓の話をするなら、武光誠著『名字と日本人』文春文庫ぐらいは読んでから語ってほしい。

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