2020年5月7日木曜日

データなくして政策なし

 「調査なくして発言(方針)なし」は、私はかつての世界労連書記長ルイ サイヤンの言葉として覚えているが、二宮金次郎だ、毛沢東だという説もある。
 出典が誰であっても構わないし、そしてこれは労働運動だけでなく、経営方針や社会政策等であっても全く正しい。

   私はコロナ問題の当初から「検査数が極端に少ないのはよくない」と主張してきたが、政府に忖度した評論家やコメンテーターは曰く「検査を増やせば医療崩壊になる」曰く「クラスター周辺を追跡するのが正しい」と繰り返してきた。
 その結果、4月29日時点の比較では、人口10万人あたりのPCR検査数は、イタリアの3159件、アメリカの1752件など、他国に比べて日本が188件であったから桁違いに少ない。

 それが5月4日、専門家会議尾身副座長がPCRの検査数は、他国と比べ明らかに少ない。これは間違いない」「3月下旬以降に感染者が急増したことに十分に対応できなかった。今後は医師が検査が必要だと考える軽症者を含む疑い患者に対しても、迅速かつ確実に検査を実施できる体制に移行するよう求める」と言ったから、先の評論家やコメンテーターはなんと言い訳することだろうか。

 ともあれ、日本の検査数が桁違いに少ないため、感染者数そのものが実態を表していないと考えるのが常識で、事実慶応大学病院の調査では市民の6%、神戸の中央市民病院では3.3%に抗体つまり感染を確認している。

 そのため岡田晴恵白鴎大教授は「厚労省発表の感染者数は当てにならないから、死亡者数の方が実態を表している」として、10日単位の「一日当たりの死亡者数」を4月9日まで発表されている。私は厚労省データに基づいて東洋経済オンラインが発表している数字で4月10日以降も追跡した。その結果は次のとおり。

 3月1日から3月10日の間の一日当たり死亡者数は0.5人
 3月11日から3月20日の間の一日当たり死亡者数は2人
 3月21日から3月30日の間の一日当たり死亡者数は2.3人
 3月31日から4月9日の間の一日当たり死亡者数は4.2人
 4月10日から4月19日の間の一日当たり死亡者数は10.2人
 4月20日から4月29日の間の一日当たり死亡者数は17.9人
 4月30日から5月5日の6日間の一日当たり死亡者数は22人

 これは厚労省発表のデータが基本である。しかも、さらに隠されたコロナ死者が多数いる。
   日本法医病理学会は、解剖医アンケートで「死亡者のPCR検査を拒否された」の回答が多数とホームページで発表している。
 首相は「肺炎での死亡者はすべて検査しているから、日本の新型コロナ死亡者数は正確」などと強弁していたが、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)や、さらにはNHK『おはよう日本』で、葬儀業者が新型コロナを疑われながら検査されないまま遺族に返される「グレーゾーン遺体」の存在を実名・顔出しで証言している。
 
 とすると、きわめて不確かな「感染者数」でピークは越えたと大合唱していいのだろうか。
 マスコミはもっぱら「いつ解除になるか」ばかりを追い、「大阪モデル」などという言葉が踊っているが、それらは共通して感染者数で語っている。
 そもそも人口比で見れば、大阪府の検査数は和歌山県の半分以下である。

 先日私は「徐々に解除に向かうのがよい」と書いたし、今もそのつもりだが、正しい判断は正しいデータに基づいてなされるべきだ。
 結論以前に、調査やデータを用いない政権やそれに追随するマスコミに踊らされているこの国が大いに心配だ。

 この現象は、この国において理系の論理が評価されていないということもあるが、人文系の「人の道」が軽視乃至蔑視されていることに遠因がある。  

2 件のコメント:

  1. 今朝の羽鳥モーニングショーを見て、私の中にあるモヤモヤ感が晴れスッキリしました。やはり正確な現状把握なくして正しい方針なし!ですね。日本の対応の誤りを明らかにし、今後の方針について丁寧に説明すれば国民は安心するだろうに。でも悲しいかな安倍晋三さんにはそんなリーダーシップをとれる能力はない。そして専門家会議メンバーの総入れ替えが必要だと、私は今でも思っています。とりあえすはPCR検査の急速な拡大を望む。そうでなければ感染したときの見殺しにされる感が拭いされません。

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  2.  ケンタさん、コメントありがとうございます。おっしゃる通りだと思います。

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