現代のような科学的な薬がない時代、薬の多くは植物(薬草)から得られていた。粽の笹や茅、柏の葉、菖蒲に蓬。
森林浴、檜、楠木のそれらは先日来書いてきたが、多くの植物には殺菌力があり、自然界はある種のバランスの上に成り立っていた。
そのバランスの一角に居るということを忘れて自然の領域に踏み込みすぎた(自然破壊した)結果、大規模な感染症が発生するのだという有力な説がある。なお、殺菌力や薬効と有毒とは紙一重ということは言うまでもない。
端午の節句にわが家では菖蒲湯に入って、その菖蒲を1本抜き取って鉢巻きにすることになっている。「家の習い」である。
古くは万葉集に「あやめ草・・かつらにせん・・」という山前王(飛鳥ー奈良時代)の歌(423)があり、続日本紀天平19年に太上天皇(聖武)が「昔は五日の節に菖蒲をかつらと為したるに・・・今より後は(五月五日に)菖蒲の蘰(かつら)に非ざれば宮中に入るなかれ」との詔(みことのり)もある。
節句というと「怠け者の節句働き」という箴言がある。
5月1日に「人生もまた緊張と緩和」であると書いたが、緩和が下手だと緊張もまた上手くないということか。
菖蒲の鉢巻きをしてその殺菌力を思いっきり吸い込むことにしよう。
それにしても、非常事態下の五月五日はハレの日ですか、ケの日ですか。
鯉のぼり庭木に尻尾を絡ませて
追記 万葉集巻の10、1955の詠み人知らず
霍公鳥 厭ふ時無し 菖蒲 鬘にせむ日 此ゆ鳴き渡れ
ほととぎす いとふときなし あやめぐさ かづらにせむひ こゆなきわたれ
※「あやめぐさ」ショウブ。邪気を払うとされた。
※「縵」つる草や草木の枝・花などを巻きつけて髪飾りとしたもの。
※「縵にせむ日」五月五日にアヤメグサを縵にする習俗があった。
ホトトギスの鳴く声は いつ聞いてもよいけれど ショウブを髪に飾る日は ここを鳴いて飛んで行け
万葉集1955の歌、追記しました。
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