2022年1月12日水曜日

賀状代りの遺稿集

   厳寒の朝、ポストに畑 逸郎さんの遺稿集が届いていた。
 本は大きく3部によって構成されていた。
 1 主に敗戦までの半生記
 2 敗戦から疾風怒濤の9年間の日記
 3 主に1990年代の作文
 
 氏は1926年(大正15年)生まれだから1の敗戦時は19歳となる。
 絶対主義的天皇制の下で志願し、陸軍士官学校の将校生徒として、玉音をめぐるクーデター計画の近辺で8月15日を迎えている。
 幹部候補生であるから戦局の実際も相当理解していたが、それでも、神風に望みを託し、かつ遺書をしたためていた典型的な軍国少年、軍国青年であった。

 2部ではそれまでの反省から驚異的に勉強を重ね、関学、京大を経て労働省に就職する。同時に、勉強は実践を伴わなければ真の勉強でないと、日本共産党に加わり、共産党の専従役員として後半生を過ごした。

 この時代を描いた小説は既に古典の域に達しているが、よく似た時代の小説以上にリアリティーがあり(当然だが)、青春小説のようでもあった。一気に読み終え、感動した。

 「親孝行、したいときには・・・」という箴言があるが、この種の話を生でお聞きしたかった。アフリカでは「老人が亡くなるのは図書館1館無くなるのと同じ」と言われるそうだが、社会というものは新しい知見をたくさん得つつ、同時に大切な経験や知恵を大河の流れのように失っていくものらしい。
 遺稿、ありがとうございました。合掌。 

2 件のコメント:

  1. 貴殿の読書量にいつも感心し圧倒されています。本日の記事もジーン!

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  2.  ケンタさん、7日9日の記事にコメントの追加もありますのでよろしくお願いいたします。

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