2020年10月7日水曜日

吉祥天再訪

   当尾の郷(とおののさと)散策のゴールは浄瑠璃寺にした。

   丁度秘仏『吉祥天女像』が開扉されていたので入堂した。久しぶりに「一度は見たい日本の秘仏五選(の内の1体)」にご対面したが、俗な感想を言えば”ほどほどの古色”が何とも言えずすばらしかった。掲載の写真は撮影したものではなくパンフレットのコピーである。絶世の美女というキャッチコピーも肯ける。

 パンフレットには「平和を授ける幸福の女神」という文章も入っていたが、私はその「平和」の二文字に浄瑠璃寺らしさを感じた。4年前に亡くなった先代の佐伯快勝師は蜷川府政の下で京都府教育委員を務められたり、その後も九条の会や平和と民主主義の運動に力を発揮されていた。私も度々講演などで話を伺った。なお、奈良の西大寺の宗務長もされていた。

 そんなもので本堂入口には『憲法9条にノーベル平和賞を』の署名簿もあったり、そのほかにも現世の種々の困難を支援するカンパや宣伝物もあった。

 そもそも中世の仏教を語るとき、これまでは、旧仏教(顕密仏教)は鎮護国家の仏教、貴族の仏教であり、僧も堕落した状況であったところ、さっそうと民衆を相手にした宗教改革ともいえる鎌倉新仏教が誕生したと言われていたが、今では大きくそれは見直されている。

 ここ浄瑠璃寺の本山は(大和の)西大寺だが、その時代、日蓮上人からは「律国賊」と非難はされたが、興正菩薩叡尊が行なった顕密仏教内部からの宗教改革は実践的で倫理的なものだった。わが家からそれほど遠くない奈良坂に「北山十八間戸」があるが、これも西大寺の忍性が建てたハンセン氏病等患者等の救済施設であった。

 つまり私は、浄瑠璃寺にその途絶えていない心意気を見て感心したのだった。

 また、子安地蔵菩薩像も安置されており、三重塔内には秘仏・薬師如来像も安置されているので、広く子どもたちにコロナ禍が及びませんようにと、ちょっと現世利益的なお願いもして浄瑠璃寺を後にした。

1 件のコメント:

  1.  浄瑠璃寺、当尾の郷は3密とは程遠い静けさです。アクセスは、JR奈良、近鉄奈良からバス、JR加茂からバスです。昔は野菜等の無人販売がいっぱいあったが、今はほとんどなくなった。無人販売を担っていた老人がさらに年老いたのだろうか。

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