2020年10月13日火曜日

橋下発言は馬鹿げていないか

 

   TBS系情報番組「グッとラック!」が学術会議新会員任命拒否問題を12日に特集した中で、橋下徹氏が推薦者リストについて「総理が全部、見られるわけない。部下がやるんです」と言って菅総理を弁護?した。私は番組を見ていないがスポーツ報知、Yahoo!ニュースがそう報じている。

 橋下氏は“世の中のことを知らない庶民”に向かって教え諭してくださったのだろうが、私は橋下氏の方が社会のいろんな組織の中で仕事をする上での常識を欠いていると思った。

 民間であろうが公務であろうが業務は当然組織の中で分担されている。当りまえである。その場合上位の管理者は重要事項は必ず自ら判断し、比較的そうでない事案は適切な人事管理という大枠の指導の下に部下に事実上の判断をゆだねている。

 だが、ここが大事なところだが、もしその部下の判断に誤り等があった場合は、上司は絶対に「それは部下のしたことだから私は知らない」とは言わずに、問答無用で自分の責任として認めて是正するのである。そうしてこそ民間でも公務でも組織は社会の中で認められ存続できるのである。

 私は橋下氏が匂わしたように学術会議新会員任命拒否というような重大問題が部下の判断に任されていたとは推定しがたいが、百歩譲ってそういう側面があったとしても、「だから総理は知らなかったかもしれない。なので責任はない」という発言をするのは現代社会のリーダーとして必要な常識的理解を欠いていると思う。

 無茶苦茶な論を吐いて庶民を騙すのが橋下氏の常套手段だが、この菅総理弁護論も見苦しい。

 正直に言えば、上述のような組織経営は民主主義といくらか齟齬があるのではないか、未来永劫正しいとも限らないのではないか、民間でいえば社畜と揶揄され公務でいえば昨今の忖度のようなあり方を批判できていないのではないか等心の整理もついていない。

 しかし、民間であれ公務であれ、こんな発言をする橋下氏は上司(リーダー)として失格であることだけははっきりしている。「きっと部下の犯したことだろうから上司を責めるのはお門違い」発言は社会人として言ってはならないことであろう。

5 件のコメント:

  1.  時事通信社のJIJI.comによると、橋下氏の懸命のヨイショにもかかわらず、「首相には事前に説明されていた」「元の名簿は決裁文書に添付されていた」「首相の判断で決定された」と報じられている。結局、橋下氏のさもしい根性が露呈されただけですね。

    返信削除
  2.  読者の文芸・短歌・大井学選に採っていただきました。
        被害者は騙されてないというらしい詐欺商法と大阪がダブる

    返信削除
  3. 私は、かねてから、労働者が自己規律を持つ社会とはどういうものかと考えているのですが、それとは逆に、自己規律を否定して上からの綱紀粛正に委ねるのが、橋下氏が最初に行っていた組織のガバナンスというものだと感じます。上は民意を受けているのだから、下々の労働者が民意を言うのはけしからん、上に従えという単純な理屈を感じます。しかし、これだけ価値観が多様化した現代社会で、選挙ですべての細かい民意を把握することには限界があり、むしろ、仕事を通じて国民の需要を把握し、把握したニーズを政策に反映させる回路を設ける方が合理的でしょう。私ももやもやしますが、労働者(生産者)と消費者の言葉が分離しているのが日本のよくない状況であり、労働者が自分たちの仕事の社会的意義を自ら語り、消費者とつながることができれば、分断は克服されると思います。行政研究活動というのもそういう文脈にあったもので、労働組合が来るべき民主主義の社会で果たすべき役割は大きい、と思うけれど、そうした話をどう広げればよいものか悶々とします。

    返信削除
  4. mylazekさんの貴重なご意見、深く沁みます。橋下や松井、吉村という人々の論(主張)はおっしゃる通りです。普通ならこんなリーダーの会社は衰退します。それでも大阪市や大阪府の仕事が回っていくのは優秀なテクノクラート(技術官僚)のおかげです。そういうテクノクラートが順に退職し、維新政治の下で忖度してきた公務員が主流になった近未来には酷い状況が生まれることでしょう。
     組織内の風通しや民主主義とリーダーの在り方は単純ではないでしょうが、この時代の当事者が「悶々」としながら築き上げるしかないのでしょう。mykazekさんのコメントは多くの示唆を含んでおられます。参考になります。

    返信削除
  5.  FBに学術会議会員任命の決裁文書のコピーが出ていました。
     私個人の率直な感想ですが、あの決裁文書は偽物、ということは改竄であるような気がします。
     私の感覚からして、あまりに行政機関内部の事務の常識を逸脱しています。あんな形はメモに毛の生えたようなもので重要事項の決裁では絶対にあるような痕跡が全くありません。それは内閣府の過去の重要文書の決裁と照合すれば判るはずです。誰か真相を追及してくれないかなあ。

    返信削除