2023年6月5日月曜日

卯の花くたし

   今年は入梅が早かったので書く機会が少しズレてしまったが・・・、
 『卯の花腐し(うのはなくたし)』とは梅雨に先立つ長雨の異称である。「五月雨のこと」と書いてあるもの(広辞苑)もあるからギリギリセーフにしてもらおう、

 五月は多くの花の季節であり、事実いろんな花が雨や風に落下するのに、それを卯の花が代表しているというところに何となく趣きがあるが、万葉集以来の歴史だけでないだろう。

 モノの本によると「この木は卯杖、卯槌などに使われ、邪悪な土地の悪霊を追い払う役目を持っていた」とあり、「古くから呪法に使われた」とあるあたりに理由があるのだろうか。
 私自身の実感にはないものだが、詩歌ではそういう精神性も含めて卯の花が初夏の代表選手であることは間違いない。

 その、ある種の霊木を腐らすのだから、古人はこの長雨をよほど疎んだように思えるが、瑞穂の国の田植えを思うとき、いささか疑問もある。

 それにしても写真のとおり、その落花狼藉ぶりはちょっとしたもので、向こうの植木鉢の小さな木にしてこうである。
 卯の花の和歌の縁語に、垣根、雪、月、郭公、神山、白川の関などがあるが、全くの門外漢ながら、雪、月、白川の関はこういう状態からのストレートな連想ではなかったか?

 五月生まれの孫の夏ちゃんは藤原京の地で誕生した。
 そして、持統天皇の歌と夏は来ぬの歌から命名されている。
 霊木卯の花よ、夏ちゃんに降りかかる悪霊を封じたまえ。

 ※ 写真は豪雨前に撮っていたもの。

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