梅雨入りとの声を聴くと直ぐに彼女の到来を確かめたくなって、奈良公園の吉城園へ行き、入口で「来てますか?」と尋ねると「卵が五つぐらいありますよ」と返ってきた。
私が初めて樹上のモリアオガエルの卵を知ってからはもう何十年も経ったが、、奈良公園のモリアオガエルの出てくる池は年々減ってきている。(モリアオガエルは日本固有の希少な蛙)
吉城園も、すぐ隣で建築工事があったりして、近年は卵も親もオタマジャクシも減ってきているような気がして心配している。モリアオガエルは自然環境のバロメーターだと感じている。(卵と言っているが、卵泡、卵塊、泡巣などといい、木の葉などに泡の塊を作り、その中に卵はある。この中で卵から孵ったオタマジャクシは下の池に落ちる)
必ず、大きくもない池の上に作るのだが、失敗して土の上に作ってしまうことはない。本能と言ってしまえば簡単だが、考えればものすごい能力だと感心する。自然はすごい。
さて、近頃は国や地方自治体から「遺産の活用」という声が「保存」よりも大きくなり、何をおいても「観光客を増やす」政策が目に余っている。
言葉の端々から、奈良は京都が羨ましいらしいが、その京都ではオーバーツーリズムが大問題になっている。
それに、目の肥えた訪日観光客は手あかのついた京都を素通りして素朴な白川郷などに向かっているらしい。
そんな失敗作の後追いをするのでなく、春日山の原生林とその麓の自然こそが貴重だということを噛み締める必要がある。そして古い寺社。古刹とモリアオガエルは取り合わせが良いと思うのだが。
私は吉城園で訪日観光客がその池に来れば、「珍しい蛙だ。木の上で産卵する。モリアオガエルという。」と説明している。もちろん日本人にも。ガイドブックにない情報でけっこう喜ばれている。と勝手に自己満足。
モリアオガエルは保護色だ。茶色い木の肌のときは茶色っぽくなる。
今回もなかなか見つからなかったので、最後の手段で、妻にスマホの You Tube でモリアオガエルを鳴かしてもらった(これは自然観察では少しだけマナー違反だが大目に見てもらおう)
直ぐに奥の方から応答があり、ようやく見つかった。
写真のモリアオガエルは約6センチ。大きさからしてオスだろう。メスは一回り大きい。木の幹でメスの来るのを待っている。
このようにオスが哀れなのは生物界の本質である。
大阪市立自然史博物館によると、大阪府下のモリアオガエルは金剛山で報告が1例あるのみで、あとは北摂山地だけで知られているらしい。それ以外で見つけられたら報告されると好い。
返信削除この記事と関係はないが、今日は上岡龍太郎の訃報に接した。書きたい想い出があるが書かないでおこうかどうか逡巡している。誰か書いてくれるだろうと祈っている。
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