2021年3月6日土曜日

国家公務員倫理法などのこと

 菅首相の長男が関与した総務省の接待問題のテレビ報道などで、「割り勘にしなかったのが悪い」「自分の分を払っておけばよかった」というようなコメントが飛び交っているが、私の知る限りそのコメントは正しくない。その理由を以下に述べる。ただし、データが少し古いので精確に論ずる場合は現行の諸規定等を再確認してもらいたい。 

 そもそも国家公務員倫理法第3条の3に「職員は、法律により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。」とあり、「贈与等」には「供応接待」が含まれている。

 倫理法を受けた国家公務員倫理規程3「禁止行為」(1)六には、「利害関係者から供応接待を受けること。」七に「利害関係者と共に飲食をすること。」とある。

 ただし、同規程(2)に「前項の規定にかかわらず、職員は、次に掲げる行為を行うことができること。」とあり、その八に「利害関係者と共に自己の費用を負担して飲食をすること。ただし、職務として出席した会議その他打合せのための会合の際における簡素な飲食以外の飲食(夜間におけるものに限る。)にあっては、倫理監督官が、公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないと認めて許可したものに限る。」とある。

 テレビのコメンテーター等はこの部分を読んで語っていると思われる。

 しかし政令第101号「国家公務員倫理規程及び解説」の第7号「利害関係者と共に飲食をすること。」には、そもそも「職員が自己の費用を負担するか否かを問わず禁止対象となっている。」とあり、前記規定の「禁止行為から除外される行為・・」の第8号に、「本号で認められる行為はつぎのとおりである。」として、① 自己の費用を負担して昼間に飲食をすること。② 夜間において、自己の費用を負担して、職務として出席した会議その他打合せのための会合の際に簡素な飲食をすること。③ 夜間において、自己の費用を負担して、倫理監督官の許可を得て飲食をすること。」と限定している。 なお、「簡素な飲食」は、「一般職員の場合、3~4000円程度のものがこれに該当する。」とある。
 重ねていうと、倫理規定(2)の八の「自己の費用を負担して飲食」できるのは、上記の①②③だけなのである。

 なお、別項第6号で「多数の者が出席する立食パーティー・・」も除外されているが、ここでは触れない。

 結局、菅首相長男関与事件では、①の「昼間」ではなく、②の「職務として出席した会合・・」や「簡素な飲食」でもなく、③の「倫理監督官の許可」も得ておらないから、割り勘分を後から返そうがどうしようが総務省幹部は国家公務員倫理法違反なのである。繰り返すが、本件は「割り勘でも違法」なのである。

 以上、「割り勘だったらよい」の誤解を指摘しておきたい。実際、現場の国家公務員は厳しく己を律しているので強く訂正しておきたい。間違った誤解が公務員労働運動の障害になってはいけないとの思いでこの記事を書いた。

 なお、菅首相長男関与事件は、「割り勘にしなかったことが悪い」というレベルの問題ではなく、元総務相でもある現首相の長男で元総務秘書官であった人物を介して、不公平な行政が行われたのではないかという、いわば贈収賄事件というのがものの本質だろうと思う。

1 件のコメント:

  1.  テレビのコメンテーターが当然のように「割り勘であったら問題なかった」かのように発言しているのが気になりました。視聴者は「国家公務員倫理法とはそんなものか」と誤解し、結局、国家公務員労働者全体についても「そんなものか」と誤解されたくないのでこの記事を書きました。行政に憲法を!行政に民主主義を!と闘ってきた公務労働運動の先輩として放置できないと感じました。

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