2021年1月11日月曜日

医療崩壊の諸問題

    1年前のことだが、日本では、北京の日本大使館のホームページに、2020124日から安倍首相が春節に向けて「多くの中国の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」と呼び掛けていたが、片や台湾では、それ以前の20191231日の夜から、武漢からの飛行機の乗客を対象に検査を始め、発熱の症状がある乗客は即座に入院させていた。この両国の政権の能力差は明らかではないだろうか。 

その台湾との比較をしてみたいが、参考までにいくつかの国も併せて考える場合、日本の感染者数は検査をしないことによって極めて不正確であるので、比較的実態に近いと思われる人口当たりの死者数で検討する。すると、山中伸弥教授がファクターXと名付けられた不思議のため東アジアの死者数は西欧に比べて少ないが、分けても台湾は実数も人口比も実効が顕著である。反対に、副総理が「民度の問題」とのたまった日本は、実態に近い人口比でみると、明らかに台湾、中国、韓国よりも劣っている。 

その台湾の政権では、米国の外交政策研究季刊誌が「世界の頭脳百人」に中に選んだ台湾・デジタル担当政務委員(大臣)の唐鳳(オードリー・タン)は、中学中退後アップルのデジタル顧問などを務め、その後、2016年から蔡英文政権に招かれて35歳の史上最年少大臣となり、今般もデジタルを駆使してマスク不足騒動などが発生しないように速やかに対処したことが世界中で注目され、昨秋も押し迫ってから日本でもそれに倣おうとし始めている。 

それよりも私が特筆しておきたいのは、政府対策本部長を務める歯科医出身の陳時中氏で、蔡英文政権発足時から衛生福利部長(衛生相)に就任した。

何が特筆されるべきかというと、ほぼ毎日1~2時間の記者会見で質問が尽きるまで誠実に答え続ける姿勢と、思いやりに満ちたコメントが市民を安心させているという。どこかの政権と雲泥の差を感じるのは私だけではないだろう。 

日本でも、きっちりと情報を明らかにして説明し、政策の趣旨を丁寧に説明すれば国民は理解し、社会は進むのである。

つまり今日の問題は、科学的に分析する能力、判断を下し政策を立案する能力もない上に、「スピード感をもって」などの言葉を弄んで「やってる感」にうつつを抜かしている政権や、どこかの知事・市長による「人災」でしかないのである。それが緊急事態宣言の現状の本質である。

もっと言えば、「票田」というか資金提供をしてくれる仲間内の業界向けに無茶なGoToナントカをするインチキ臭さを感じた国民は、大本営発表を信じることなく、その結果、無症状者が広範囲に感染を拡大させているのだ。これはもう客観的な事実である。 

   さて、今般の緊急事態宣言では医療体制の逼迫、医療崩壊の危機が大きく叫ばれているが、そこでICU等病床の国際比較も検討してみたい。表の数字は去年の5月の厚労省の数字である。なお別掲のとおり、厚労省は、ICU以外にも同等の対応可能な病床があるので、実数は17,034床で人口13.5というように大々的に付記している。・・が、

   もう一つの表は10日の朝日新聞だが、ここでは重症者数は827人となっている。ちょっと待て!最大17,034床のICU並みの病床があるのに重傷者827人で医療崩壊だと言っているのだこの国は。つまりどこかに嘘がある。常識的には17,034床に嘘があるのだろう。こんな嘘を続けるから少なくない国民も政府の要請に従わないのだろう。

さらにいうと、厚労省の大々的な宣言にもかかわらず、例えば1218日のNHK発表のデータでは「重症者対応のベッド数」は「3,575」とされており、17,034はやはり誇大広告(早い話が嘘)と思われる。なお、いろんな論文でこの辺りの数字が微妙に異なるので確定しがたいが、やはり人口比でいえば先進国中の相当な低位であるのは間違いない。 

この間まで世界第2の経済大国といわれていた国のこのような明らかな凋落、没落の原因は、一言で言って竹中平蔵等が推し進める新自由主義である。小さな政府、官から民へ、近頃の言葉で言えば「自助」、維新のキャッチコピーでいえば「身を切る改革」である。そもそもセーフティーネット、福祉などというものは金儲けに馴染まない。明らかなことは、公立病院を廃止して民間病院があるからいいじゃないかといった維新や自公の政策が緊急時に対応できないこういう脆弱な社会を作ってきたのである。

とまれ、株式会社の中での常識が社会問題では非常識になることも多々ある。効率だとか金儲けと馴染まない課題こそ政治の責任なのである。

今年は衆議院議員選挙の年、この現実をしっかりと覚えておこう。

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