2023年4月20日木曜日

桐一葉(きりひとは)

   保良の宮遺跡を語る薄暑かな 〔鵜飼敏彦〕
   保良の宮は、淳仁天皇・孝謙上皇が近江の地に奈良時代後半に造営した宮都で、淳仁・孝謙不和により再び平城京に遷都し建造物は西大寺や西隆寺のため解体されたため、歴史から忘れ去られていった宮都である。

 そのため、保良の宮擬定地には諸説唱えられているが、小笠原先生は多くの考古学的発見から、それは、石山寺北1200mの石山国分寺台地『住友活機園』の場所であろうと指摘されている。
 このことだけで一冊の本になる内容であり詳細は割愛するが、冒頭の俳句からはその勉強の様子が伝わってくる。

 そういう勉強が滋賀県JR大津駅近くの滋賀大学大津サテライトプラザで重ねられ、そこに参加されていた鵜飼敏彦さんが詠んだ句が冒頭のものである。

 ということで私自身は鵜飼さんとは面識がないのだが、句集の表紙の帯にある小笠原好彦先生から「勉強するように」と贈呈を受けたのがこの句集で、大いに恐縮している。
 人生、思わぬ出来事が降って湧いてくるものである。

 巻頭句から2句紹介すると、
  茎立ち(くくたち)や子の居ぬ過疎のなんでも屋
  刎頸の朋(ふんけいのとも)の消息桐一葉
 何れも朝日新聞年間最優秀賞の作品である。

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