どちらかというと氏は東の方なので直接講演等を受講したことはなかったが、文献等ではよくお目にかかっていた。
特に写真の『古代天皇陵の謎を追う』は幾度も参考にさせていただいた。
氏は大正15年生まれで、19歳で戦火にまみれ、上海で敗戦、捕虜となって後帰国されている。
本によると、建国神話に始まる皇国史観を全く疑いもせず、「必ず神風が吹く」と信じ切っていたという。
それが1945年4月14日、神風も吹かぬまま輸送船が撃沈され、沈みゆく船からの脱出時に自分の人生と建国神話が吹き飛んだそうで、その死の淵からの生還が、ほんとうの歴史、考古学を専攻した動機という。
古代天皇陵の謎は、相変わらず建国神話に乗っかった物語の厚い壁の向こうにある。
古墳が墓である以上、科学と信仰の両面を持っている。しかし、戦前の皇国史観が果たした許しがたい思想統制とアジアの民の死傷を直視すれば、いわゆる「静謐」を保ちつつ正しい歴史を客観的に立証していかなければならない。
それが現代人の良心というものであろう。
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