2021年5月23日日曜日

一億玉砕

   昭和史の大家半藤一利氏の著作の中に次のようなくだりがある。

    朝日新聞は自社の70年史で書いています。「昭和6年以前と以後の朝日新聞には木に竹をついだような矛盾を感じるであろうが、柳条湖の爆発で一挙に準戦時体制に入るとともに、新聞社はすべて沈黙を余儀なくされた」とお書きになっていますけれど、違いますね。沈黙を余儀なくされたのではなく、商売のために軍部と一緒になって走ったんですよ。つまり、ジャーナリズムというのは、基本的にはそういうものでね、歴史を本当には学んでいないんですよ ◆

 この話を下世話な言葉でいうと、戦争に反対した方が新聞の部数が伸びるか賛成した方が伸びるかというのが商業新聞のホンネにあって、戦争で国民が疲弊すればするほど美しい戦争の欠片を賛美し、世論を煽る方が部数が伸びたのであった。

さらには、己が煽った結果の「熱狂」によってジャーナリズム自身が引き回され、理性的な主張は急激に部数を減らし、はては「これが世論の声であるから」と理由をつけて己を正当化し、結果はアジアの人々を殺し、凌辱し、略奪していった。日本国民を前線で餓死させ、沖縄では集団自決を強い、大空襲とヒロシマ、ナガサキへ導いたのだった。

そんなことを書きたくなったのは、YAHOOニュースの『週刊ポスト』(524日発売号)の記事に接したからである。

 その中に要旨次のようなくだりがある。◆ 4種類あるスポンサー契約のうち、3番目にランクされるオフィシャルパートナー(協賛金は約60億円)になっているのが「読売新聞グループ本社」「朝日新聞社」「毎日新聞社」「日本経済新聞社」で、4番目のオフィシャルサポーター(同約15億円)になっているのが「産業経済新聞社」と「北海道新聞社」である。それぞれ系列のテレビ局を持つから、事実上、国内すべての全国紙と全国テレビネットワークがスポンサーとして五輪を推進する立場にある。より大きなメリットは、オリンピックの盛り上がりに乗じたイメージアップや販売増、広告増で、そのために五輪批判ができないとすれば問題だ◆

◆週刊ポストが発したアンケートは、17月開催に賛成か、2、開催の場合は無観客にすべきと思うか、3、有観客で開催の場合、社員に会場での観戦を推奨するか、という3つの質問だった。そして、新聞各社はアンケートにどう答えたか。

読売新聞グループ本社「当社は『安全な大会の実現に万全を尽くすことが大切だ』と社説で繰り返し述べています。ただ、観客の有無については東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の結論が出ていない段階で、お答えしかねます」

朝日新聞社「お答えをいたしかねます」

毎日新聞社「新型コロナウイルス変異株による感染が拡大する中での東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催につきましては、選手やスタッフ、観客の安全が確保される一方で、医療体制に悪影響を与えることがあってはならないと考えており、51日付社説でも取りあげたところです」

日本経済新聞社「お答えはしません」

産業経済新聞社「回答は差し控えさせていただきたいと存じます」

北海道新聞社「ご回答を控えさせていただきます」

 読売と毎日はかろうじて回答を寄せたが、「安全が大事」とか「医療体制が大事」などというのは当たり前すぎて社説に値しない。菅首相が壊れたレコードのように繰り返す答弁ペーパーとほとんど同じ文言である。しかも読売は、組織委が結論を出していないことには答えないというのだから、もはや組織委の下部組織であることを自任しているのではないかとさえ感じる。

 そして、これだけの国民の関心事に当事者として回答しない朝日、日経、産経、北海道は、今後、自分たちはどんな理屈で当事者たちを取材するのか不明だし、もはや紙面で何を言っても読者の共感は得られないと覚悟すべきだろう◆

私は週刊ポストの記事に賛成する。

【追伸】 今日5月23日(日曜日)午後2時から日本共産党大阪16区オンデマンド演説会が開かれ、冒頭ゲストスピーカーとして加藤弁英住職が登場する。アドレスは下記のとおり。

https://www.youtube.com/watch?v=XWdwYvedpEA



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