2021年5月15日土曜日

一平、館 直志

   個人の感想だが近頃テレビが面白くない。特に在阪テレビ局がパッとしない。なのでNHK大阪放送局(JOBK=BK)制作の朝ドラが道頓堀と浪花千栄子だと聞いた時は「またヨシモトの下手な芸をステレオタイプの大阪喜劇として見せられるのか」とうんざりしていたが、私のヨミに反して『おちょやん』はしっかりしたドラマであった。その『おちょやん』が幕を下ろした。

 内容は異なるが私には昭和40年代に放送された茂木草介作『けったいな人々』の大阪の匂いがした。道草ながら『けったいな人々』のタイトル画は加藤嘉明氏の切り絵であった。それはさておき・・、

 朝ドラでは浪花千栄子が岡田嘉子からノラの『人形の家』の台詞を通じて人生を学び、渋谷天外と浪花千栄子は岡田嘉子と杉本良吉のシベリア逃避行を手助けして警察に踏み込まれる場面があったが、ドラマの一平はダメ男だったし、天外も現在の倫理からは問題があったかもしれないが、現実には天外は左翼のシンパであった。
 天外の死後発見された『れきしおおじてん』という自叙伝風の原稿には、「笑わせるのが喜劇だと思っている役者と資本家と、そして批評家がいるあいだは、喜劇は笑わせるだけで終わるだろう」とあった。

 そういう意味では、『お父さんはお人好し』の作家長沖一もその親友の秋田実も戦時中は特高の拷問を受けたりした左翼のシンパだった。

 天外の喜劇作家としてのペンネームは複数あったが、一番有名であったのは舘直志で、その名の由来は「矛盾だらけの世の中を建て直したい」だった。

 そんなことを言いたくなったのも、昨今の在阪テレビ局がやたらにヨシモト芸人をコメンテーターなどとして登場させ、そのコメンテーターが嫌というほど権力者に媚びた発言を繰り返すのに辟易していたからである。もちろん、ヨシモト芸人全員というわけではないが、かつて大阪の芸人や作家は、米朝、龍太郎、義一、いとこい等々、そんなお追従はしていなかったと思うからである。こういうのを隔世の感というのだろう。

3 件のコメント:

  1.  終わってしまって少し寂しい気もしますが後半はみんないい人になってしまい実在の人物を描く難しさを見ていて感じました。後年、浪花千栄子さんは自宅の庭の玉石全部の裏に「天外」と書いて踏みつけて歩いていたそうです。おっとりとした大阪弁で喋るお母さん、というイメージですが気性の激しい人だったのでしょう。
     

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  2. 米朝師匠が「私らはコメの一粒、釘の一本も作らへん商売やから、末路哀れは覚悟の前や」と語っていたこと、また「もともと芸人の仕事はお上の姿勢を正すのが本業で、お上に助けてもらう事など言語道断」というのが米朝師匠の教えである、と義一さんか左京さんだったかが言っていたように思います。
     米朝師匠も六代目松鶴師匠も吉本興業には属さず一線を画していたように思います。

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  3.  ひげ親父さん、上方芸能の蘊蓄あるコメントありがとうございます。『おちょやん』は朝ドラとしてはああいう脚本で十分なんでしょうね。ヨシモト芸人が少ないので芝居の品が下がらなくてよかったと思います。

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