2020年6月4日木曜日

晶子の時代と

 私の亡くなった母のことだが、SARSの際に近所の医院に行った折、医師がスペイン風邪のことをあまり知らなかったので当時のことを滔々と語って来たらしい。90歳をはるかに超えていた。
 「火葬場が追い付かず棺桶が並べられていたのだ」とおまけのように母から聞いた。

   そのスペイン風邪の折、母の女学校の先輩にあたる与謝野晶子はいくつかの評論を発表している。要旨曰く・・
 「風邪までが交通機関の発達に伴(つ)れて世界的になり、この風邪の伝染性の急激なのには実に驚かれるにもかかわらず、政府はなぜ多くの人間の密集する場所の一時的休業を命じなかったのか」
 「盗人を見てから縄を綯ふやうな日本人の便宜主義」・・と糾弾し、
 「社会的施設に統一と徹底との欠けて居る為に、国民はどんなに多くの避けらるべき禍(わざはひ)を避けずに居るか知れません」・・と語り、
 「かう云ふ流行病のあるたびに、私は都市の衛生設備の不完全を悲しみます。此頃の電車の過度な満員などは人間を詰込んで病毒を強制的に伝染させる箱のやうな感じがします」・・と述べている。
 なんという先見性だろうか。

 とすれば、我われもまた未来に向けて語らなければならない。
 月が替わって日本列島は梅雨の季節を迎えた。ここ数年の経験では集中豪雨の被害も想定される。避難所にソーシャルディスタンスは確保されるのか、衛生的で三密に至らない避難所をどう準備しておくべきか、感染者が発見された場合の対応策は準備されているか・・・

 原因不明ながら欧米に比べて死亡者数が少なかったというアナウンスに酔っていてよいのか。(言っておくが日本はアジア大洋州ではワースト2である)
 「『感染者』が減った」「宣言は解除された」「笑顔が戻ってきた」的な報道でよいのか、メディアの皆さん。そして国民ひとりひとり。
 「100年後も盗人を見てから縄を綯ふやうな日本人の便宜主義は変わっていない」と晶子さんに笑われないか。 

   気の所為か額紫陽花の色浅し

4 件のコメント:

  1. 吉村、小池知事らは経済再生のためには多少の犠牲は、と考えているのだとしか思えません。
    都庁の毒々しいレッドイルミネーションが用心しながら「夜の街」にも出かけなさい、と誘っているように見えます。

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  2. さすが!素晴らしいお母さまですね。

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  3. 吉村、小池両知事はただただメディアを利用したイメージづくりに終始していますね。

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  4. Yukuriさん、コメントありがとうございました。😉👍🎶

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