2020年6月23日火曜日

フェイスシールド

   松井大阪市長は5月22日、新型コロナ感染防止のため、市内の小中学校の児童生徒約165千人と教員にフェイスシールドを配布し、授業中の着用を呼びかけた。
 記者団には「小学生は向き合ってしゃべっちゃだめよと言っても会話してしまう。小学校からやる必要がある」「マスクはいらんかもね」と話したと報じられているが、さてその医学的根拠は・・・・?

 6月9日『大阪府医師会 学校医部会』は次のとおりフェイスシールドに関する意見を公表した。

 ▮ フェイスシールド活用に対する意見 ▮
 フェイスシールドは、相手の方からの咳、くしゃみの飛沫が本人の目に入るのを防ぐために使用するもので、自分の唾液や痰が相手に飛ぶのを防ぐための物ではありません。
 医療現場では、フェイスシールドは感染者と直接接するリスクの高い場所で、あくまで医療用マスクや防護服、手袋などと併用されているものです。学校に於いてもフェイスシールドは教職員が体調不良の生徒に対応するなどの特定の場面で使用し、生徒に一律に装着を促す必要はないと考えます。
 5 22 日付け文科省「学校に於ける新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~『学校に於ける新しい生活様式』」の中でマスクの着用や手洗い、換気、身体的距離を保つことの徹底などは記載されていますが、フェイスシールドについては一律に必要なものではなく、現場の必要に応じて使用されるものという基本的な考えが示されております。
 マスク装着の理由は飛沫を飛ばさない事であり、実際に医療現場では、患者・医師の両者がマスクを装着し、診察をしている場面では感染のリスクは極めて低いというのが、日本環境感染学会の意見です。学校内で全員がマスクをしていれば1m以内の近距離であっても高い確率で感染を予防できると考えられます。それに基づいて考えると「学校に於いてフェイスシールドが必要となる場面はほぼない」と言えると思います。
 一方でフェイスシールドを着用することによるデメリットの方が大きいと考えます。
 例えばプラスチックの断面が当たることによる外傷、視界を妨げることによる事故、熱が籠ることによる熱中症の助長、頭部を締め付けることによる頭痛や集中力の低下による学習の妨げなどが考えられます。さらに過剰な感染予防対策は不安を助長し、児童の精神衛生上にも問題があると思われます。
 大阪府医師会学校医部会としては学校に於ける感染拡大防止対策として、生徒、教職員のマスク装着、手洗いを徹底し、フェイスシールドの使用は生徒に関しては原則不要と、教職員に関しては、体調不良の生徒の対応時などに限定して使用することを推奨します。
          令和2年6月9日
          大阪府医師会 学校医部会

   続けて、613日『一般社団法人 大阪小児科医会』も次のとおりのコメントを発表し、これはメディアでも取り上げられた。

 6月より順次小中学校の登校が始まり、子どもたちを新型コロナウイルス感染症から守ることを第一に様々な取組みがされるなか、フェイスシールド着用も話題になっています。小児科外来でも、お子さん本人や保護者の方から、フェイスシールドについての疑問や不安をお聞きします。

 フェイスシールドは基本的には装着した本人が感染しないための目の防護具であり、他人にうつさない効果はかぎられています。そのため、感染者に直接対応する医療従事者などを除き、一般的な感染予防、特に子どもたちへの使用はすすめられません。従って、学校生活での感染拡大防止策としては、文部科学省が522日に発行した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~」に説明されていますように、換気の徹底、身体的距離の確保、手洗い、マスク着用を基本にすれば十分であると考えます。さらに過剰な感染予防策は、子どもの心身へ影響を及ぼす可能性があります。

 大阪小児科医会ではこれらの事を踏まえ、検討を重ねて、ポスターを作成しました。これから新しい行動様式で学校生活を始める子どもたちとそのご家族、関係者のみなさまの一助となれば幸いです。
           2020613
           一般社団法人 大阪小児科医会

 読者の皆さんはどう考えられるだろうか。
 私は「後出しじゃんけん」で「無駄な公金の支出を返せ」とまでは言わないが、玉石混交の情報社会を”理性的に判断して生きよ”というべき教育の現場で、こんなエビデンス(医学的根拠)のない「思い付き」が横行してはならないと思う。
 宇沢弘文著『社会的共通資本』の指摘ではないが、政治家はその道の専門家の意見に謙虚でなければならない。
 メディアへの露出を政策の最重要判断基準とするような府市政は有害であろう。

   夏近し虫捕り網を買い足して

2 件のコメント:

  1. 専門家や他人の声に耳をかたむけないで、思いつきや独断でことを進める維新政治、やってる感だけが先行、雨合羽の件といい今回の件といい、こんな調子で大阪市を廃止するのは絶対に認められない!

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  2.  同感です。ところが在阪テレビ局が賞賛の雨あられです。仕掛け人はヨシモトです。理性では十分に負けてはいないのですが、手法や熱意はもっともっと大切かもしれません。反省です。

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