2020年6月3日水曜日

県境を跨ぐ

 8割おじさんこと北大西浦教授を非難する文書が少なからず目についた。
 中には「風俗業やその客など”要請”に応じてもらえない層がいくらか出てくるだろうから8割と言う」という教授の論立てに対して「風俗業に従事せざるを得ない人々への差別感がある」というものがあったが、実社会の社会政策を立案する場合、冷徹に現実を見据えるべきだと思うので、私は教授の主張を納得した。

 また「現実に日本全国8割外出自粛にまで至らなかったのにピークが収束したから教授の主張は間違っていたし、そのために経済を停滞させた」という論があるが、それは結果論だと私は思う。
 山中教授の言葉を借りれば「ファクターXはまだわからない」。

 その「外出自粛」だが、関西圏ではいち早く休業要請の始まった大阪から、つまり大阪ナンバーの車が奈良県のパチンコ店に来ているというニュースが大々的に報じられ、その後全国でも「県境を跨いだ移動の自粛」が繰り返しアナウンスされた。
 芸能人の不倫騒動ではないが、地域で感染者数が発表されると、何処の病院だ、何処の誰だ、何処でうつった、どんなところに立ち寄った‥などという噂が飛び交った。
 さらには、他県ナンバーの車が走っている、マスクをしていない人がいる、営業している店がある等々の「自粛警察」「自警団」が噴出した。

我が家はこの図の地域ではありませんが・・
   それらを生み出した素地には、データを明確に提起しないまま情緒的に恐怖感を煽るような政府や自治体首長らの発言、それを嫌というほど繰り返すテレビ等のメディアがあるが、裏返しの話としては、少なからず日本国民が自分の頭で情報を整理して考えるという常識を失いつつあるのではないかと私は心配している。
 恐怖感が思考停止を生み、与えられた枠組みの”形式を絶対”として、それ以外を許せないというのはこういうことだろう。

 そんな気持ちも底に秘めて(実際にはそんなに深刻には思っていないが)短歌を捻ってみたところ、赤旗・読者の文芸・鈴木英子選に採ってもらった。

 県境(けんきょう)を跨(また)ぐなというアナウンス胸に刺さるも県境(くにざかい)に住む

0 件のコメント:

コメントを投稿