2019年10月12日土曜日

秋は悲しき

 奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき
既にハーレム
   奈良公園に秋が来た。
 神鹿にも恋の季節である。
 あちらこちらから牡鹿(雄鹿)の声が聞こえるが、その声は「古今集の世界だ」などという雅なものではなく、ただただ頭に血が上った半狂乱に近い声である。

 手の早い牡鹿は既にハーレムを作って悠々としているが、そうでない多くの牡鹿は鼻血ブー状態で、可哀相というか見苦しいというか・・・ある種殺気立っている。なので特に子供たちは奈良公園の秋の鹿には注意してもらいたい。突き倒されたりすることがままある。

 さて、秋の奈良公園はひときわ遠足や修学旅行生で賑わっている。
 この頃は中学生などもチームに分かれて行動する学校が多い。
 ガイドの後ろに並んで行進するよりも良いかもしれないが、ひとつ気になることがある。
 子供たちは先生の作ったであろうテキストの世界しか見ようとせず、まるでウォークラリーのように「テキストのこれは見た、あれも見た、次はここへ向かおう」という感じに見える。反対に、テキストに書かれてない場所は、いろんな案内板や珍しい景色などがあっても一向に興味を示さない。解説を読もうともしない。
 で、おせっかいおじさんは、「みんなちょっと待って」と呼び止めて『影向の松』を解説するのだが、お能を知らない中学生には変なおじさん状態で、「その先の左に驚くような木があるからね」と木から竹の出ている「変な木」のことを言うのが精いっぱいだった。
 
   先生のテキストには『水谷神社』も載ってはいないようで、中高生たちは『子授け石』を見もせずに通り抜けている。
 ただし、こんなところで解説をしたら本当に変なおじさんに間違われるだろう。

 で、だれも寄り道をしない草原で、鹿の糞をせっせと運ぶ糞虫を掌(手のひら)に乗せて「みんな奈良公園の好さの半分も知らずに帰っていくのだな」とひとり呟いている。

 鶯の糞は化粧品と認知されているようだが、鹿の糞の化粧品でルリコガネのように美しくという商売は無理だろうか。
 ルリコガネを這わせた掌は心持ち美しくなったような気がするのだが。

1 件のコメント:

  1.  この記事を書いている12日の10時半現在、台風19号は記録的な危険度で東海・関東に向かっている。特別警報の発令もあるかもしれないから、早い目に自分の身を守れとテレビは報じている。
     そうであるなら、東京の駅頭のライブなどをしている暇があったら、フクシマ原発の情報をどうして報じないのか。避難は必要ないのか。
     フクシマを全く報じない状況が異常だ。
     政府もメディアもおかしい。
     「想定外の台風でした」というようなニュースがないことを望む。

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