明日2月11日は建国記念の日なので、古代史を趣味としている私としては、日本書紀のいう皇紀元年・西暦の紀元前660年を考古学の成果に照らし合わせて検証したい気もあるが、そして最近の学説では縄文時代といいながらも、弥生時代の開始をそのあたりまで遡る説も少なからず提出されているが、いずれにせよ、国家の成立がその時代にまで遡れないことは常識人としては議論の余地がまったくない。ただし、神話が神話として語られることに目くじらを立てる気は私はない。
故に歴史を見る観点から建国記念の日を考えるなら、紀元前660年問題ではなく、昭和20年敗戦までの明治憲法下の紀元節(建国記念日)が、教育勅語、軍人勅諭などを通じて如何に国民を悲惨な戦争に導いたか、そのためアジアの民衆を虐げたかを歴史的に再確認すべきであろう。それが建国記念の日を歴史の目で見る正しい視点だろう。さて、建国記念の日の直前に岸田首相は、「佐渡金山世界遺産登録推薦」問題について、一旦は推薦を見送るとの表明を行ったところ、安倍前首相らが「今こそ新たな『歴史戦チーム』を立ち上げ、日本の名誉と誇りを守り抜いて欲しい」と抗議し、一転、岸田内閣が推薦することを閣議決定するという騒動があった。
この問題は、かつて中国の推薦した「南京大虐殺の文書」の登録に反対した日本政府が、「関係国の異議申し立てを可能にし結論が出るまでは登録しない制度の導入を主張し制度化された経過があり、今回は韓国が「登録するなら強制労働等があったという負の側面も明らかにすべきだ」と主張していることから、そのことに一切触れないままの推薦は、読売新聞によれば、「外務省内では」「今回は日本が逆の立場になり、韓国の反対のある中で推薦すれば国際社会の信用を失いかねない」と指摘している。そういう問題である。
さらに加えて日本政府は、2015年の軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」の際のステートメント(声明)で「意思に反して連れて来られ、厳しい環境下で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいたこと」について「理解できるような措置を講じる」と発表したにもかかわらずその後まったく対策を講じないため、昨年、世界遺産委員会は強い遺憾を示し、約束の実行を求める決議を採択しているという前提もある。
そもそも佐渡金山における戦時中の朝鮮人の強制労働と差別については、新潟県史や旧相川町の「相川の歴史」という公文書でも克明に記録されている。
ユネスコやイコモス(国際記念物遺産会議)の原則に立てば、世界遺産の推薦登録にあたっては、以上のとおり、過去の歴史の一部分だけでなく、負の歴史を含めて、歴史全体の文脈の中で位置付けられるべきが当然だし、それが正しい歴史との向き合い方だろう。
最後に安倍前首相らがいう「歴史戦」という言葉だが、これは2014年頃から産経新聞が本格的に使いだし、その後右翼・保守派政治家などが頻繁に使用している言葉だが、これは歴史的事実の「ひとつの見方」というようなものではなく、「戦前の日本政府が犯した行為への批判」を、現在の日本と日本人への「不当な攻撃」とネジまげて捉え、「中国人や韓国人を相手に戦いを受けて立つべきだ」「主敵は中国、戦場はアメリカである」と主張するもので、官房機密費なども疑われる大量の出版等を使った「戦略」のことといわれている。
そういうことを、「建国記念の日」にあたって振り返ることは大切な気がする。
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