2019年8月10日土曜日

徴用工の個人請求権について

 自分が歳いったからかもしれないが、近頃の安倍政権やマスコミの主張というのがあまりに幼稚すぎて情けない思いでいる。
 徴用工問題でいうと、韓国の大法院(最高裁)が現日本製鉄に対して韓国人4人に対して一人当たり約1000万円の損害賠償を命じたことを声を荒げてけしからんと言っているが、近代民主主義国家において三権分立は常識中の常識であるから、この種個人請求権については、1965年日韓請求権協定があったとしても当然起こりうる事態が起こったという一つでしかない。
 それを韓国の大統領等行政府に対して「韓国は約束守れ」というのは、早い話が「司法の独立を抑え込め」というのであるから、独裁国家であれというに等しい論である。
 
 確かに国と国の間では、この協定によって日韓の財産及び請求権問題に対する外交的保護権が放棄されていることについては異論がないが、個人の請求権までは消滅していない。
 事実日本政府は、協定締結の当初から個人請求権は消滅していないと解釈していた。
 締結時の外務省の内部文書には「個人が相手国に請求権を持たないということではない」とある。
 その淵源は、同じような条件下の日本でシベリア抑留の被害者や原爆の被害者が個人請求権を主張してきたし、日本人の韓国に残る資産について訴訟提起の可能性を含んでいたからである。
 故にその後も、政府は一貫して消滅したのは政府対政府の外交保護権だけであり、個人の請求権は消滅していないと国会にもたびたび答えてきた。

 だから日本の最高裁も2007年西松建設事件で、「日本での」司法上の救済は否定しながらも、被害者救済のための関係者の自発的努力を促し、これを受けて西松建設は謝罪と賠償を行った。

 同種の問題は日中間にもあり、2016年三菱マテリアルは総額約64億円の支払いと謝罪という和解を行った。

 このように、今般の大法院判決もF35戦闘機を100何機買おうという日本にとっては外交その他で十分解決できる問題であったのだが、安倍右翼政権が日本製鉄に事実上待ったをかけ、いわゆるネトウヨと呼ばれる票田向けにパフォーマンスをしたために抜き差しならなくなったのである。
 まるで太平洋戦争に突っ込んだ時代の空気と変わらない。

 とまれ、韓国への輸出総額は約6兆円、中国には約14兆円に上っている。
 安倍政権の無能ともいえる外交は、日本の産業にとっても有害であることは明らかだ。
 マスコミも冷静に議論をしてほしい。
 私は法律問題というよりも外交問題だと考えている。
 すると、一連の経過からして、外交交渉を無理やりデッドロックに乗り上げさせた安倍政権にどうしても非があると考える。

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