2019年1月9日水曜日

油まみれの水鳥

   1月7日朝日新聞朝刊に宝島社が2面通しの大きな広告を打った。1枚目の写真である。
 油まみれの水鳥の写真は1991年湾岸戦争が始まる前、ブッシュ政権から発表され、米国中はおろか全世界に周知されたから皆さんも記憶にあることだろう。
 「イラクのフセインがわざと油をペルシャ湾に流してエライことになっている」という証拠写真だった。 
 
   広告の右上の文章を拡大したのが2枚目の写真である。
 写真上でクリックしていただけると拡大して読めないかと思う。
 「嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ」と文章を閉じている。

 戦争が終わった後、実は米軍がタンカーを誤爆したための流出だと判ったが、それは何人もの人間が殺された後だった。
 
   実は当時、油まみれの水鳥よりも全米世論を決定づけたテレビ映像があった。
 在米クウェート大使の娘で15歳の高校生だったナイラちゃんである。
 米国議会の証言台で「フセインが指揮するイラク軍がクウェートに攻めて来て、病院の保育器に眠る赤ちゃんを冷たい床に放置して皆殺しにした」と、少女は涙ながらに訴え、その姿はテレビを通じて全米に何回となく拡散された。
 「フセインは酷すぎる」「この戦争だけはやらなければならない」「仕方がない」と世論は固まった。

 戦争が終わって1年以上が経過して、ナイラちゃんはアメリカ生まれでアメリカ育ち、クウェートに行ったこともないことが判明した。
 証言の台本を書いたのも、泣く演技を指導したのもヒルアンドノールトンという広告会社だった。
 さすがに父親は責任を追及されて失職したが、殺されたイラク人の命は戻ってこなかった。
 (以上の諸事実は西谷文和氏の「戦争のリアルと安保法制のウソ」から引用させていただいた)

 よって、この宝島社の広告には(宝島社の出した本全てに共感はしていないが)賛辞を惜しまない。
 松本サリン事件の折り、あまりのメディアの報道に、私自身河野さんが犯人かと信じた時がある。
 1月6日には安倍晋三首相がNHKテレビの「日曜討論」で、辺野古について「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」と述べた。
 しかし、琉球新報によると、現在土砂が投入されている「埋め立て区域2―1」からサンゴは移植していない。 
 埋め立て海域全体では約7万4千群体の移植が必要だが、7日までに移植が終わっているのは別海域のオキナワハマサンゴ9群体のみにとどまっている。
 油まみれの水鳥は過去の話ではない。

   ほんとうを見抜いてほしいと水鳥は油まみれの眼で語る

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