宮川徏著『よみがえる百舌鳥古墳群』(神泉社2500+税)を読んで楽しかった。
著者はわが母校の大先輩で、歯科医と考古学の二足の草鞋を履いている。
著者の講演はこれまでも聞いたことがあるが、今回の分厚い著作で丁寧にその内容を知ることができた。
普通の考古学や史学ではあまり聴いたことのない大胆な指摘、仮説等々がふんだんに盛り込まれていて読みごたえがある。
さらに、考古学の大先生方との豊富なエピソード、歯に衣着せぬ宮内庁書陵部とのやりとり・・・、年末に一気に読み終えた。
どの章も楽しいのだが、「前方後円墳の設計思想」は著者の独壇場の感がある。
2012年12月28日「古墳を造る」の記事に書いたとおり、この本の168ページ掲載の「奈良市立一条高校での地割り実験」には私も参加していたから、写真の中のゴマ粒のような中にいた。
相似形の古墳があるが、各辺を縮尺したのでなく、ヒトマス(区)を基本単位にしたのである。
帆立貝型を含め前方後円墳は8つ(区)のパターンに分けられる。
区の大きさはヒロである。大陸の北方畑作地帯は「歩」、南方水田地帯のモノサシは「ヒロ」である。
墳長で大小を論じるのでなく、区のヒロ数で権威等が表されていることを注目すべきである。
前方後円墳のパターンによって王統と主従関係が解明できる…などなどが非常に面白い。
ただ、「そのパターンは王統ではなく築造した土師師集団によるものである可能性はないのか」と以前に質問したことがあるが、そのときは強引な司会者の不要なコメントで答をいただけなかった。
この本でも百舌鳥の古墳の各被葬者の治定まではたどり着いていない。
宮内庁のおかげで楽しみは将来に持ち越されている。
文字知らぬ倭(やまと)の国の大王(おおきみ)よ汝(な)は何故に冢(ちょう)を築かん
古市・百舌鳥古墳群各被葬者の治定(ちじょう)まではたどり着いていないと書いた。そんなもので、もう一度「倭の五王」を読み返したが強烈な疲労感を覚えた。そもそも記紀はどれだけ事実を歪めているのか。2019年、考古学の出番である。4世紀も分からないが5世紀も分からない。ああ。
返信削除清生さんから『堺市民懇・新年号』の宮川先生インタビューの記事を送っていただいた。
返信削除この本を補強するエピソードが豊富で楽しかった。
ありがとう、清生ちゃん!(ちゃんでもいいかな)