2018年11月6日火曜日

石原莞爾のドツボにはまる

 11月2日の「文字に酔う」のコメントに触れたように、「天子蒙塵」の小説の中で、永田鉄山は石原莞爾を呼び出して会談を行った。

   若い時分、上司に人の名前を説明するとき「石原莞爾の莞爾です」と言って通じなかったので少し驚いた記憶がある。
 満州事変の首謀者石原莞爾は、私たちの世代ならいざ知らず、戦前に青年期を迎えたインテリでもあった上司の世代なら絶対に知っていると思ったのに・・・という驚きだった。

 といって、私が知っているのは受験勉強並みの「満州事変(1931年昭和6年柳条湖事件)の企画・実行者」というぐらいのもので、私が読んだ少なくない近代史の本の中でもその程度の記述が多かった。
 ただその一方、「軍略の天才」「東條英機を容赦なく批判した豪傑」という文章も多々あり、真っ向から石原莞爾の欺瞞性を批判したといわれる佐高信著『石原莞爾』(講談社文庫)でも、著者の意図ではないかもしれないが、ある種「魅力的な人物」?の印象を受けていて複雑な感情を抱いたままであった。

 そのような「もやもや」があったのでコメントにも触れたのだが、コメントにそう書いたために更に「もやもや」が反って膨らんで、つい、保阪正康著『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)を購入してしまった。
 目次は、第一章 東條英機は何に脅えていたのか 第二章 石原莞爾は東條暗殺計画を知っていたのか 第三章 石原莞爾の「世界最終戦論」とは何だったのか 第四章 犬養毅は襲撃の影を見抜いていたのか 第五章 渡辺和子は死ぬまで誰を赦さなかったのか 第六章 瀬島龍三は史実をどう改竄したのか 第七章 吉田茂はなぜ護憲にこだわったのか である。この目次を見て購入した。

 で、読後感だが、日本国を破滅の一歩手前まで追い込んだ東條英機のあまりに非知性的な精神主義が安倍政権と見事に重なり過ぎるという派生的な知的収穫はあったが、石原莞爾についてはますます判らなくなったというのが正直なところである。
 
 私は、太平洋戦争にかかわる戦記物などを得々と語るのを聞くのがあまり好きでなかったせいもあり、近代史、現代史の知識は園児並みである。そのことの勉強不足を嫌というほど痛感させられただけであった。
 つまり、石原莞爾のドツボにハマってしまった感がある。
 なので今は、石原莞爾を自分の中で整理できなければ、戦前の総括が十分叶わない気分になっている。

 全く異次元の本であるが、昭和天皇独白録の二・二六事件のところに、(昭和天皇)「参謀本部の石原莞爾からも町尻武官を通じ討伐命令を出して戴き度いと云って来た、一体石原といふ人間はどんな人間なのか、よく判らない、満州事件の張本人であり乍らこの時の態度は正当なものであった」とあったのには、自分の感情と少し似ていてクスッと笑った。
 それにしても、「天子蒙塵」はハタ迷惑な小説であった。

   秋寂ぶや明治150年を読み直す

2 件のコメント:

  1.  私も「昭和の怪物」を読みました。東條英機が安倍そっくりで笑いましたが、石原莞爾は良い人のように書いてあって戸惑ってしまいました。長谷やんで整理して教えてください。(FBのコメントから転載)

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  2.  繁さん、FBにコメントありがとうございました。勝手にこちらに転載させていただきました。本文のとおり、石原莞爾については勉強不足で解りません。今後の読書や勉強で解ったことがあればどうか教えてください。

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