2018年11月2日金曜日

文字に酔う

   小説に引き込まれて夢の世界に酔っている。
 題名は『天子蒙塵』。
 浅田次郎氏の第1部『蒼穹の昴』、第2部『珍妃の井戸』、第3部『中原の虹』、第4部『マンチュリアン・リポート』に続く第5部に当たる。
 第4部まで楽しく読んできていたから、文句なしに購入した。

 近代とはどういうものであったのか。
 物語を追いながら深く考えさせられた。
 舞台は中国であるが、日本の物語でもある。

 ハッとしたのは七十一章、満州国皇帝即位前夜であった。
 日本の特務機関員が大動員され、それぞれが「南満州鉄道新京支店」「三井物産新京支店」「大倉商事新京支店」などと名乗るとの記述であった。

 私の祖父は父方も母方も私が生まれる以前に亡くなっていたが、母方の、つまり母の父は若死であった。
 その祖父は上海で「〇〇公司」という会社を経営していたが、そもそもは大倉喜七郎の片腕だったと聞いている。大倉商事である。
 そしてその妻、つまり私の祖母は上海で、汪兆銘政府の高官夫人らとダンスパーティーに興じていたと伝わっている。
 母は小さい頃フランス租界で迷子になって怖かったと私に昔語りをしていた。

 まさか、私の祖父は特務機関・スパイだったのでは???などと想像した。
 何の根拠もない夢物語である。文字に酔った妄想である。
 若死といっても暗殺されたらしい形跡はないし、猟銃が好きで江南の地で鴨の殺生が過ぎたので若死したと周りの者には言われていたらしい。

 ただ、小説の時代は遠い時代劇の時代ではなく、私の祖父の時代なのだと思うとこの小説がリアリティーを帯びてくる。(天子蒙塵の時代は昭和であるから、もう父母の時代の真直中)
 こうして小説に酔うのは楽しい。しかし酔いっぷりは少し尋常ではない。もしかして、私の中には大陸浪人の血が混ざっているかもしれない。

4 件のコメント:

  1.  李春雲が生まれたのは光緒2年、1876年、明治9年。蒼穹の昴は清朝末期に向かうその頃から始まって、天子蒙塵でようやく満州国皇帝即位1934年3月1日前夜まで来た。
     西太后、李鴻章、袁世凱などは既に去り、張学良の前に周恩来が乗り込んでくる場面があり、東京では永田鉄山が石原莞爾と相まみえる。本巻の主人公はもちろん愛新覚羅溥儀。

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  2.  蒼穹の昴の雑感は2011年2月28日の記事にもあります。すべて私的な雑感です。

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  3.  今、嫁はんと一緒にハマっているのがケーブルテレビの中國歴史ドラマ「月に咲く花の如く」です。清朝末期に実在し、中国の近代化に貢献した女性豪商・周榮の愛と成功を描いたドラマ。
     中国陝西省の街を巨大なオープンセットで作り上げ撮影したそうです。4人の主人公の一人の若者が日本の近代化―明治維新に学び、帰国し「変法」を広めようとする、これが「戊戌の変法」に繋がっていくらしいのですがまだ先の話のようですが2017年度中国歴史ドラマ視聴率ナンバー1に輝いたドラマだそうです。
     

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  4.  ひげ親父さんのコメントのドラマのことは全く知りませんでした。
     よく似た時代のよく似た話かもしれません。少しドラマの方が古いかもしれません。
    戊戌の変法、洋務運動は蒼穹の昴では早々に登場します。小説はその後がメーンになっていきます。
     しかし、かみ合ったコメントに楽しい気分です。

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