2018年11月10日土曜日

壊れゆく国

 カリフォルニア州サウザンドオークス市でまたまた銃乱射事件があり12人が死亡した。
 テレビは犯人を元海兵隊員でアフガン帰還兵でPTSD(心的外傷後ストレス障害)だったと報じている。
 遡る10月にはピッツバーグで11人が殺された。2月には高校生ら17人が殺された。昨年11月には26人が、10月には58人、一昨年6月には49人が殺された。唯単に西部劇の国だからだろうか。

 堤 未果著『アメリカ弱者革命』(新潮文庫)に帰還兵のインタビューがたくさんある。
 「イラク戦争のことはもちろん知っていたけど、テレビでは人が死ぬ映像も映されないし、フセインを倒して喜ばれて、いいことしてるんだくらいに思ってた。でも、実際体験してみたら、全然違ってたよ」

 「訓練期間中、俺たちは同じ言葉をリズムに乗せて何度も繰り返し叫ばされた。『その女を殺せ、その子どもを殺せ、殺せ、殺せ、全員殺せ!』 朝の点呼のとき、食事の前と後、訓練の最中、寝る直前まで、両手を背中の後ろで組んでその言葉を叫ばされるんだ」

 「声が小さいと、見せしめに、頭を固定させられて残酷な映像を何時間も見させられる」「あれをやられたやつは毎晩、悪夢で寝られなくなるぜ、それが怖くて、みんな顔を真っ赤にして絶叫してたよ」

 「あるビル内を捜索している途中に5,6人のイラク男性が入ってきて、アラビア語でなんかわめきはじめた。上官は一言『銃をとれ!』と叫んで・・・何がなんだかわからなかった。マシンガンの音がして、ビルを出るように言われ、出たところでミサイルが撃ち込まれ、そこらじゅうが血の海で、イラク人の家族の手足が散らばってて、さっき僕が目を合せて微笑んだ小さな女の子の体の一部を見たとき、・・僕はポケットからカメラを取り出して、その子のボディーパーツを写真に収めたんだ」

 帰還兵は全員必ずダメージを受けて帰ってくる。PTSDだ。2004年の陸軍の調査ではイラクのアメリカ兵6人に1人が重度の精神障害と発表されている。
 アメリカ兵100万人だから、いずれ治療が必要な者は10万人を超すだろう。

 兵士は兵役中は国防総省の傘下だが、帰還者はVA(退役軍人協会)の傘下となる。しかし、帰還兵用の病院のPTSDの予約は1年先の状況だ。ドラッグ依存症、アルコール依存症もだ。帰還兵のホームレスは全くもって珍しくない。

 ここには銃規制だけでも解決できない闇がある。
 日本に、アメリカ兵の代わりに海外派兵に踏み切って肩代わりしてくれという米為政者の切実さがよく判る。
 そしてその先には、壊れゆくアメリカ社会と同じ行く末がこの国で起こるであろうこともよく判る。
 銃乱射事件を見て、「ライフル協会が悪い」「広いアメリカのことは判らん」という感想だけでは足らないのではないだろうか。
 あまり記録が多くはないが、太平洋戦争後の日本でも現実に起こっていた。
 ドラマではあるが、朝ドラ・カーネーションの勘助の挿話は記憶している。
 最初は「戦争で余程怖い出来事があったのやろな」と思って見ていたが、後で母親がポロッと「あの子もやったんやろな」と呟いた。

   枯葉舞う乱射事件の超大国

0 件のコメント:

コメントを投稿