国立国会図書館関西館であった「国会図書館開館70周年講演会」は、国際日本文化研究センター副所長・井上章一氏の『本でまなぶこと 街がおしえてくれること』であった。
1時間半の講演を乱暴に一言でいえば、世に存在している「定説」のようなものが如何に「嘘」であるかということであった。
曰く「阪神タイガースは昔から人気球団だったわけでない」「関西の人気球団は南海ホークスだった」
「日本では、興福寺の阿修羅像のように三次元の造形では美的であるのに、二次元の絵画には約束事が多くて美人が残っていない」
「明治の高等女学校の修身の教科書には『美人は勉強ができない』とあり醜いことが称揚されていた」
「和服の女性もズロースを穿くきっかけになったという白木屋の火事で、和服の女性がそういう理由で多数亡くなったという事実は全くない」
「法隆寺の柱の銅張が古代ギリシャのエンタシスだという証拠はない」「どちらかというと北方遊牧民(拓跋)の龍門石窟に起源があるだろうが、明治の脱亜入欧意識が前説を生んだ」
「数寄屋造というのは花街に特徴があるという常識(であったもの)がいつのまにか『格式ばった書院造を克服した粋』とされてしまった」・・・等等々
そして、「日本人は自己主張を控えて和を大事にする」「それに比べて欧米人は自己主張が強い」という「定説」に対して、それぞれの都市の景観を比べ、「ヨーロッパの都市では調和を乱す建築は許されない」「戦争や地震で壊滅した街はほんとうに元通り復元される」「それに対して日本の都市は全く無配慮で勝手に建てている」という指摘は面白い。
それはテレビの「世界街歩き」や「鉄道の旅」でも実感するところだ。
エンタシス関連でいえば、「正倉院の校倉造は湿度調節をはたしていたので宝物の保存が良かった」という「定説」があった。
しかし、正倉院の大修理の際に見学したが、結構大きな隙間がいっぱい空いていて校倉の伸び縮みなどのレベルでは全くないことが一目で理解できた。
本庶先生ではないが、「教科書はまず疑え」「定説はまず疑え」だと納得した。
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