2011年3月20日日曜日

カチハジキを探して

 1月28日のブログに書いたように、大正生まれの義母は生駒谷の農家の娘で、秋にはヤマモモ、グミ、ツルイチゴ、ヤマブドウ、アケビ、そしてカガミソ、コシキ、カチハジキ等の木の実を食べていたためオヤツというものを買った覚えがないらしい。
 ところで、このうちヤマモモからアケビまでは普通に判ったが、カガミソ、コシキ、カチハジキって、いったい何の木のことか判らず、それから探索の旅がスタートした。
 
 まず第一に、食べられる木の実が載っていそうな本をかき集め、義母の記憶に添いながらネットを検索し、カガミソというのがガマズミのことらしいことが判明した。これが1月のこと。
 その後は、ジュンク堂書店で「木の実」や「奈良の方言」の本を立ち読みしたり、何回もネットで検索したり、それらしい写真を義母の施設に持参して確認を求めたが、一向に進まなかった。これが2月のこと。
 
 第二に、関係ありそうな語彙を思い浮かべて各種の検索を続けていたところ、「明治大正昭和初期の和歌山県田辺西牟婁地方の子供たち」の中の「木の実とり」という中に、ついに、次の文章を発見した。
 「山で何喰た  コシキの実喰た  インデ何した  ビチ糞たれた」 品のあるセリフではないが、子供はよろこんで口を揃えて囃し立てたものである。
 インデは 「帰って」 ビチ糞は 「軟便」 の意。コシキは赤い実のなるカマツカ(バラ科)のこと。カマツカは一名ウシコロシともいわれている。
 コシキは無味であるが、茶紫色に熟すサセンボ(和名シャシャンボ、ツツジ科)は甘味も濃くてよろこばれた。 いずれも小粒で、口にはたまらず、小枝を折って持ち帰ることも多い。 また、実を手にせず枝に口を当てて食べていた。
 よし、シャシャンボなら近所にある。早速写真を持って義母に確認を求め、ほぼ間違いないことが判明した。これが3月上旬。

 第三に、このシャシャンボ確定後すぐ、先に尋ねていた生駒市立図書館から「紀州里域植物方言集に、こしき=カマツカとありました」と電話があったが、これは以上のとおり解決済み。
 併せて、「奈良方言集に、かっちん=アラカシとあり、かっちんばりき=オニハゼとあります」と教えていただいた。
 アラカシは問題外だが、カッチンバリキ===カチハジキ これは間違いなさそうだと推理し、鬼櫨の写真等を持って義母に尋ねたら、即座に「こんな櫨なんか食べんかった」と却下された。
 しかし、カッチンバリキ===カチハジキ には捨て去りがたい“臭い”がする。
 そこで、周辺の検索を書籍やネットで継続したところ、「ツツジ科のナツハゼは和製のブルーベリー」というのを発見した。紅葉の美しさからハゼといっているらしい。ハゼという名前までもらった木だからカッチンバリキという方言まで一緒にもらってもおかしくなかろう。
 このナツハゼの写真を義母に見せたところ、「これやこれや」と目出度くヒット

 カガミソ=ガマズミ、コシキ=シャシャンボ、カチハジキ=ナツハゼが、生駒谷の方言か、義母の勘違いもあるのかは判らないが、わが一家としてはこれで一件落着にした。
 書籍も偉い、ネットも偉い、生駒市立図書館も偉い。楽しい探索の旅だった。
 この間、義母にとっても有効なリハビリになったようだった。
 (以下の写真はネットから)

カガミソ

コシキ


カチハジキ


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