2021年10月3日日曜日

餅貝(もちがい)再会

   本当にたまに行くだけの産直スーパーで餅貝(標準の名前は鏡貝)に再会した。60数年ぶりのご対面である。

 60年以上前、堺泉北臨海コンビナートができる前、小学生の私は夏休みというと毎日のように大浜海水浴場で遊んでいた。泳いだり、波打ち際に砂のお城をつくったり、そして帰り際には足で底を掘って獲った餅貝を持って帰り、家で貝焼きにして一緒に行った友人たちと楽しんだものだ。
 思い出のそれは10㎝ぐらいあったが、今回のそれは大きなもので7㎝だった。
 (10㎝・・小さい時の思い出は大きく見え、そういえば伏見稲荷の老舗の煎餅屋さんで「もっと大きな狐のお面があったはずやが」と尋ねた折りも、「100年以上前から同じ型を使っています。そんなことを言う年寄りが何人もおられるが・・」と言われたことがある。)

 ところがその後、この餅貝をいくら探しても見つけることができず、そもそも大浜海水浴場自体がなくなり、もう再会は絶望だろうと思うようになっていた。就職してから居酒屋などで語っても、大阪近辺の仲間にもみんな「そんな貝は知らん」と言われてきた。

   さて、料理というほどのこともなく、フライパンにアルミホイルを敷き、強火で焼いて口が開いたら出汁(醤油で十分)を垂らすだけ、いたってシンプルなのが思い出の味である。今回もそうしただけ。

 NHKBSの『こころ旅』ではないけれど、他人にとってはなんということのない景色であっても、その人にとっては代えがたい思い出の景色があるように、もっと美味しい貝はいっぱいあるだろうが(事実、そうであるから値段も安いものだった)、私にとってはこれは代えがたい貝なのだ。

 妻も「美味しい」と言ってくれた。だからといって続けて食べるつもりもなく(食べてもよいが)、できれば5年ごとぐらいにどこかのお店に出てくれれば丁度いい。

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