2019年9月21日土曜日

知性を否定する者

   精神科医の香山リカ氏がフェースブックで発言され、赤旗のインタビューでも訴えられている話が非常に示唆的だった。
 話の趣旨をかいつまんで言うと、ツイッターで『亡き父が釧路市で徴用工が虐待されているのを目撃し「あの人たちが怒るのも無理はない」と言っていた』と書いたところ、「嘘つき」という応答(リプライ)がすごい数あり、コメントも何万件もあったということで、要するにそれは「嘘だ」「証拠を見せろ」というものだということだった。

 亡き父の思い出話に証拠を出せというのもひどいが、徴用工の過酷な労働の実態は市史にも記載されているという。
 そして香山氏が、「証拠を出せ」と応答した人に本を紹介したところ、「本は証拠として弱い」「時間を有意義に使いたいから読まない」と返事があったということだ。

 私の実感からいうと、SNS上でのその種の発信は日曜日には極端に減少するから、少なからずアルバイトが担当しているように思っているが、それにしても先の「返事」は単に歴史の否定にとどまらず、知性の否定といってよいだろう。
 赤旗の見出しが『人としての最低条件は』であったのも大いにうなずける。

 そもそも敗戦時に軍部や関連する軍需工場などでは徹底して焼却、つまり証拠隠滅が行われたことは近現代史家半藤一利氏の各種の著作にも記されている。
 私自身、軍需工場の幹部社員だった父からも実際に聞いている。
 なので、戦前のこの種の問題で「証拠を出せ」というのは、組織的と思われるネトウヨ集団のマニュアルだろうと思われるとともに、歴史を俯瞰できない彼ら集団の知性の水準を露呈している。

 徴用工ではないが従軍慰安婦問題で私はこのブログyamashirodayoriを書く際には、できるだけこの目で確かめて書くように心がけてきた。
 2014年9月12日の『朝日対産経』は、国立国会図書館関西館に実際に行ってコピーをとってきた。
 2014年9月22日の『大勲位のご苦心』は、国立国会図書館東京館からコピーを購入した。
 そこには、元産経新聞社長や大勲位中曽根康弘氏が軍の幹部として、得々として慰安所を造ったことなどが語られていた。
 それに比べて、何が「時間を有意義に使いたいから読まない」だ。

 少し違う角度で話をすれば、本物のやくざが人を脅す場合、「お嬢さんはいつも何時ごろにお帰りですね」などと言うというのは常識だ。言外に「断れば家族に被害が及ぶぞ」である。これに近い話は多くの公務員が体験したことだ。
 もしそれを、文字面だけで「やくざは世間話をしただけだ」と言うならば、やはりそれは「知性の欠陥」「社会に対する読解力の欠如」と言わなければならない。
 ネトウヨ(主にネット社会上の右翼)の前述の「返事」はこういう水準のものである。

   真東の日の出に向かって走りつつ火口に飛び込む眩暈を覚ゆ
   早早朝ポスティングの際、怖かった

3 件のコメント:

  1. 香山リカさんの記事は私も記憶していますが、最近香山さんの講演会が中止に追い込まれるということが続いています。これも組織的な動きでしょう

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  2.  正直に話をする自由、言論の自由が大いに踏みにじられています。そういう大事なテーマに「社会の木鐸」を任じるマスメディアが鈍感なのが現代社会の問題です。
     いわゆる記者クラブ制度の中で権力と癒着し、挙句はトップの面々が権力者と酒食を共にするなどの結果でしょう。
     故に、蟷螂之斧と笑われようが、こういうSNSやミニコミ紙で大いに語っていきたいと思っています。

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  3. 知性を否定できるだけの知性がない…

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