2019年9月16日月曜日

ウラジーミルの返歌

9月5日、ロシア極東ウラジオストクで開催された国際会議「東方経済フォーラム」に出席した安倍首相はプーチン大統領の前で次のように演説(詩の朗読?)をした。
「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。歴史に対する責任を、互いに果たしてまいりましょう。平和条約を結び、両国国民が持つ無限の可能性を、一気に解き放ちましょう。そのほとんど次の刹那、日本とロシアの連結は、地域を変える。世界を、大きく変え始めるでしょう」

   その”ポエム”に対してプーチン大統領は次のとおりロシア文学風の”返歌”を返した。翌6日、ウラジオストク市民との交流会で・・・、
「第2次世界大戦終結時の状況からすればロシアの領有権に疑問の余地はない」という発言に対して、「それ(第2次世界大戦の結果)に依拠しよう。スターリンがすべてを手に入れた。議論は終わりだ」と。

 さすがにこれには、日頃「嫌韓発言」に忙しい日本会議や神道政治連盟の自民党や右翼の皆さんも抗議したと思いきや・・・、
ネットの言葉を借りれば、「プーチン発言に反論したのは自民党でなく志位和夫だった!」。

 ネットの文章・・・■ 例えば、自民党には衆参合わせて397人もの国会議員がいる。ところが北方領土についてのプーチン発言について誰一人として反論しなかった。典型的な内弁慶ばかり。情けない自民党議員!
 これに対し日本共産党の委員長、志位和夫が即座にツイートした。
 『相手がこう居直っている以上、スターリンが千島を奪う「根拠」とした「ヤルタ協定」が、「領土不拡大」という戦後処理の大原則に背くものだったことを正面から批判し、是正を求める立場に立たねば一歩も進まない。「ウラジーミル」といくら叫んでも無駄だ』■

 議論の要は、全千島列島(全体)が、平和裏に結ばれた明治8年樺太千島交換条約に基づいた日本領土であること。
 故に、ヤルタ協定は領土不拡大の大原則に背き、それを前提にしたサンフランシスコ条約も誤っていること。
 だから、日本政府はロシアと交渉し平和条約を結び、全千島の返還を実現すべきである。

 そうであるにもかかわらず、サンフランシスコ条約やヤルタ協定の批判をせず、「南千島は(サ条約で放棄した)千島でない」などという珍論を展開し、挙句はこの間までの4島返還をすらズルズルと2島返還に後退させたのが歴代自民党政権と安倍政権だ。
 何もしないが「している感」の演出だけはする安倍政権。でも朗読劇は拍手もなく幕を閉じた。
 昨日の記事の最後の言葉を繰り返させていただこう。
 安倍政権支持者に愛国心はないのか。

3 件のコメント:

  1. あの演説を聴いて、何これと思ってしまいました。外交交渉能力のなさを暴露したようなものです。理論武装も戦略もなく、中味のないポエムででごまかすしかなかったのでしょうか。

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  2.  地図上も歴史上も歯舞・色丹は北海道の一部です。
     千島列島とは、北は占守島から南は国後島までが地図上も歴史上も千島列島です。
     択捉島、国後島は千島でないという主張は正確ではありません。敗戦時のどの時点でソ連が侵攻したかは問題ではありません。
     日本人とロシア人が混住していた樺太をロシア領とする代わりに全千島列島を日本領とするとした樺太・千島交換条約は明治8年に平和裏に締結されたもので、国際法上もここが原点です。
     世間話的にすれば、資源その他豊かな樺太と貧しい千島列島を交換した日本は損をしたと言われたりしています。
     なお、日露戦争で樺太南部を日本領としたのを前提にするなら、第2次世界大戦後のソ連の現状を認めなくてはなりませんから、この論は成り立ちません。
     ヤルタ秘密協定とそれを前提にしたサンフランシスコ条約は領土不拡大という近代国際法上の大原則に違反しているときっぱりと批判しなければなりません。
     アメリカに従属してきた歴代自民党政府がサンフランシスコ条約を批判できなかったことがボタンの掛け違えを起こしてきたと言えるでしょう。

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  3. 詳しい解説ありがとうございました。

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