2020年12月8日火曜日

悟りの境地に幸あれ

   12月4日の『チコちゃんに叱られる』を途中から見たら『お経ってなに?』の解答のところで、答は『お経は生きている人たちに向けたお釈迦様のアドバイス』だった。

 そして花園大学佐々木閑教授(写真)の解説は、搔い摘むと「お釈迦様の悟りの代表的なものは三法印(さんぽういん)で●諸行無常(しょぎょうむじょう)この世の全てのモノは変化し壊れていく ●諸法無我(しょほうむが)自分中心にモノを考えてはならない ●涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)欲望や憎しみなど自分勝手な思い込みを無くすと苦しみが消えて楽になる・・というもので、決して、この世で安楽で快適な豪華な生活ができるようになりますよと言っているものではない」

   「仏教は約2500年前に生まれたが、釈迦の弟子たちが釈迦の教えを文にまとめたものがお経で、時代や社会のニーズに合わせて書き換えられたり違う解釈をしたりして様々なバリエーションが誕生し、そのうちのどのお経を主たる拠り所にするかでいわゆる宗派が誕生した」このほか多くの解説があったが割愛する。

 私がこの番組のプロデューサーの発想力に感心したのはこの後で、一般に広く唱えられる般若心経(浄土真宗や日蓮宗、法華宗では唱えないが)を駒澤大学の先生であるお坊さんが読経されるところに、同時通訳のように現代語訳を被せたところだった。

 「同時通訳」は、「観音様は智慧を身につけるためにすごい修行をしました。そして、私たちを形づくる全ての要素が実は実体のない仮のものだと見抜いたのです。それによって全ての苦しみを消すことができました。・・・・」と始まって、中略の後、「おお、悟りの世界に行った者たちよ!君たちの悟りの境地に幸あれ!」と結んだのだった。

 私は長く般若心経を唱えない環境にいたこともあり、般若心経は概論程度の理解しかないが、この「同時通訳」には感動さえ覚えた。以前の記事で「踊念仏はうたごえ運動」ということを書いたことがあるが、宗教と音楽は密接だと思う。読経は音楽の要素が強い。故に、現代語訳のお経では儀式が荘厳でなくなるという話もあるが、この「同時通訳」はアウフヘーベンしたもののように感じた。

4 件のコメント:

  1. 宗派を超えた若手僧侶が一堂に会した法話会の動画が有ります。「H1法話グランプリ33」で検索すると出てきます。仏教界の若手も「生きている人の為」一生懸命活動されているのが分かります。

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  2.  スノウさんコメントありがとうございます。話されている内容の評価は別として、仏教界の中でもいろいろの問題意識をもって試行錯誤されているのですね。You Tubeで色々見ました。

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  3. 宗派を超えてそれぞれの教義から法話を話ししかもどの教義が優れているとかいう評価でなくこの僧侶にもう一度会いたいという評価で一番を決めるところにユニークさを感じます。日本仏教の良い所だと思います。ユダヤ、イスラムや北アイルランドのようなところに学んでほしいです。教義の違いで殺しあう宗教戦争を宗祖はどのように感じているのでしょう。

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  4.  歴史を振り返ると「現在が先進」「過去は野蛮」というように単純ではありません。宗教も思想も生まれた背景、育んだ文化、移動・拡大する過程での変化があり、それを直視するのも楽しいものです。「結論」「経典」を絶対とする見方についてマルクスは、「それがマルクス主義なら私はマルクス主義者ではありません」と言いましたが、核兵器などの科学の「進歩」によって人類が滅びる可能性の時代を思想的に乗り越えなければなりません。その場合、日本仏教の「融通無碍さ」に大きな働きをしてほしいものです。

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