季節が季節どおりにやってくることを祈る「風雨順時」という言葉がある。唐詩選にも有名な「年年歳歳花相似たり」という名句が出てくるが、その句は続けて「歳歳年年人同じからず」と述べ、歌い出しには「明年花開いて復た誰か在る」というのだから的確すぎて言葉もない。
先日来所謂喪中はがきが届いた。中でも友人本人のそれを知らせるご伴侶様のはがきも辛い。12月は寂しい月である。
ロウバイの花が開き始めた。まるで蝋細工のように透き通った花だから蝋梅という説もあるが、わが家の庭のそれは几帳面に12月に咲き始めるので、臘月に咲くから臘梅という説を私は採っている。ちなみに辞書によると、臘とは古代中国の年末の祭祀の名前で、冬至の後、第三の戌(いぬ)の日に、猟のえものの獣肉を供えて先祖百神をまつる祭というらしい。
歳をとってウインタースポーツとも縁遠くなってからは、私は特に冬が苦手になっている。木枯らしが吹こうものなら自分は屋内にいるにもかかわらず、その音を聞くだけで陰鬱になる。そんな心的に重い季節であるにもかかわらず、庭には場違いで爽やかな香りが漂っている。臘梅である。そんなとき私は呪文のように「冬来たりなば春遠からじ」と呟いて自分を慰める。ブログではこの香りをお届けできないのが惜しい。
投函した賀状には小さく「春信」(春のたより)と書いた。
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