2020年9月28日月曜日

大勲位のお手柄

   菅内閣は925日、昨年死去した中曽根康弘元首相(大勲位)」の「内閣・自民党合同葬」の経費として、今年度予算の予備費から約9643万円を支出することを閣議決定した。私などは、歴史や伝統を口にするなら、古墳時代に幕を下ろした薄葬令の精神ぐらい学んだらどうかと言いたいが、ちょっと彼らには無理か。 

   さて、こういう”ひょんなこと”から中曽根康弘元首相が注目されたので、この際とりあえず従軍慰安婦に関する大勲位の「お手柄」ぐらいは再確認しておこう。

   松浦敬紀・編/文化放送開発センター/1978の『終わりなき海軍』という本に、戦中海軍に所属していて「戦後成功者」となった者の思い出話が得々と語られているが、その中にこうある。

   タイトルは「二十三歳で三千人の総指揮官」。

   当時、インドネシアの設営部隊の主計長だった中曽根が、荒ぶる部下たちを引き連れながら、いかに人心を掌握し戦場を乗り切ったかという自慢話なのだが・・・ 

   「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して、慰安所をつくってやったこともある。かれらは、ちょうど、たらいのなかにひしめくイモであった。卑屈なところもあるし、ずるい面もあった。そして、私自身、そのイモの一つとして、ゴシゴシともまれてきたのである」

   おそらく、大勲位は後に従軍慰安婦が問題になるなんてまったく想像していなかったのだろう。自慢話として得々と「原住民の女を襲う」部下のために「苦心して、慰安所をつくってやった」と書いている。

   さらに、防衛省のシンクタンク・防衛研究所の戦史研究センターには、「海軍航空基地第2設営班資料」(この班は大勲位が当時主計長を務めていた海軍設営班矢部班のこと)というものがあり、同部隊の工営長だった宮地米三氏がそれを記録し、寄贈。同センターが歴史的価値のある資料として保存しているが、その記録には次のようにある。

   「・・整備一応完了して、攻撃機による蘭印作戦が始まると工員連中ゆるみが出た風で又日本出港の際約二ヶ月の旨申し渡しありし為皈(ママ)心矢の如く気荒くなり日本人同志けんか等起る様になる。主計長(中曽根)の取計で土人女を集め慰安所を開設気持の緩和に非常に効果ありたり」。

   その「第2設営班資料」のなかには、慰安所設置を指し示す証拠となる宮地氏の残したものと思われる手書きの地図も存在していて、上陸時に民家だった場所を日本軍が接収し「設営班慰安所」に変えてしまった証拠もある。

   しかも、「土人女を集め」という表現を読む限り、中曽根主計長が命じて現地で女性を調達したとしか考えられないし、実際、インドネシアでは多くの女性が慰安婦として働かされており、彼女たちは日本軍に命じられた村の役人の方針で、どんなことをさせられるのかもしらないまま日本兵の引率のもと連れ去られたことを証言している。そして、年端も行かない女性達がいきなり慰安所で複数の日本兵に犯されたという悲惨な体験が語られ、その中にはこのパリクパパンの慰安所に連れてこられたという女性もいる。つまり、中曽根首相がこうした"強制連行"に関与していた可能性も十分にある。

   おまけをいえば、右派メディアの代表格の産経新聞の中興の祖ともいうべき元社長鹿内信隆氏が著作の中で、「そのとき〔慰安所の開設時〕に、調弁(ものを現地調達する軍隊用語)する女の耐久度とか消耗度、それにどこの女がいいとか悪いとか、それからムシロをくぐってから出て来るまでの待ち時間が、将校は何分、下士官は何分、兵は何分・・といったことまで決めなければならない(笑)。料金にも等級をつける。こんなことを規定しているのが「ピー屋設置要綱」というんで、これも経理学校で教わった。」と言っている。

菅内閣の閣議決定のおかげで、以上のような大勲位の赫々たる「お手柄」を思い出させていただいた。菅内閣は彼の葬儀費用として国の予算から約9643万円支出することを閣議決定した。

この記事はリテラのエンジョウトオルの記事を大いに参考にさせていただいた。

4 件のコメント:

  1.  今日のブログは「資料」のようなものだが、FBでシェアというのも少ない。
     日本会議系の右翼の皆さんが「慰安婦は朝日新聞の捏造だ」と大キャンペーンを張っているのに対する明確な回答だと理解されていないのだろうか。
     これらの史料(資料)については私は”裏をとる”ために国立国会図書館で色々と確認した。

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  2. そういえば、吉村知事が大阪市長の時(2018年10月)、「慰安婦像が両市の信頼関係を破壊した」とか言って、サンフランシスコ市との姉妹都市関係を一方的に終わらせましたね。この時は「一市長の独善でやることではない!」という批判が続出しましたが、対立をあおり、分断を促す手法が、「大阪市廃止」を問う住民投票でまたぞろ繰り返されていることに憤りを覚えます。

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  3.  文学の世界だけでなく人間には少し弱い部分や屈折した精神もないことはありません。そこを煽るとある種の世論を引き付けることができるでしょう。トランプ人気もそうでしょう。そして維新の手法がそれです。しかしこれを容認すれば社会は腐敗します。反対に言えば、維新に対して感情的な言葉で反発するのでなく、理性的に「大阪市廃止投票」を批判することが大切だと思います。もちろん、その量も大切です。

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  4.  猫持さんのコメントに引きずられて少し大勲位からズレました。

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