2020年9月1日火曜日

疫病退散のお札

   東大寺から『青面金剛法之寶牘(しょうめんこんごうほうのほうどく)』というお札を送っていただいた。
 曰く、「青面金剛は元は疫病を蔓延させる鬼神だが、正しく修法を行うと病魔や悪鬼を退散させることができる尊像」ということで、今般特に東大寺において疫病退散の祈願、勤修がされているという。

 説明文によると、青面金剛尊は中国の道教思想に由来し、中世以降は庚申信仰と結びついたらしい。なら町の庚申堂や軒先の「身代わり申(さる)」のあれである。人の体内には三尸(さんし)が潜んでいて、庚申の夜、人が眠っている間にその人の悪事を天帝に告げにいくから、その夜は青面金剛に向って徹夜で庚申講を催すのである。
 
 さてご案内のとおり、安倍首相が退陣を表明した。
 これについて識者がいろんな論評をされているが、私はしんぶん赤旗に掲載された内田樹教授の寄稿文に大いに共鳴した。一部文字を付加して以下に紹介する。

 ◆ 安倍首相の7年8カ月で、日本の国際社会におけるプレゼンス(存在感)も、経済力も、文化的発信力も、あらゆる領域で国力が落ちました。いまや多くのランキングで「先進国最下位」が日本の定位置になっています。
 これは政治家・官僚・財界人・メディアの上層部の倫理的なインテグリティ(廉直、誠実、高潔)が壊れてしまったことが原因です。
 どんな国民も自分たちの国が道徳的に範例的であるという「幻想」を必要としています。どれほど軍事力があっても、経済力があっても、国民が「われわれは私利私欲のためだけに行動する」と自認している国はいつの間にか壊れてゆく。
 安倍政権では、「権力を持つものは道徳的な模範である必要はない」ということが新しい常識になりました。一般人には許されないふるまいも、権力者とその周辺の人間には許される。それこそが「権力を持つことのメリットだ」というみすぼらしい事大主義(風見鶏的ご都合主義)を、多くの国民は「リアリズム」だと信じるようになりました。この道徳的シニシズム(冷笑主義)が日本社会を根元から腐らせました。
 権力を持つ人間には一般人以上に高い倫理性が求められるということが再び常識に登録されるまで、日本の没落は止まらないでしょう。◆

 ・・・余談をくわえれば、私はこの安倍政権に維新の皆さんを補足しても何ら不思議でないように思う。
 そこで三尸の蟲だが、内田教授が的確に指摘した明々白々な事実を、忖度とは思いたくないがどういうわけか天帝には報告していないように見える。

 ならば私たちは、青面金剛尊に疫病退散を祈ると同時に、データやその先の医薬開発という利権のためにPCR検査を抑制し、「無駄を省く」という名目で保健所や病院や福祉の予算と体制を削りに削った安倍自公政権の反倫理性を、祈りとは別に大きな声で世に訴えなければならないと思う。
 ニュースではその酷い政治の中心で行動してきた人物が次期首相の有力候補という話もある。

 庶民であれ宗教家であれ、この国では「幻想」であれ「痩せ我慢」であれ、もっと倫理性をテーマとして大事にしなければならないのでは。
 東大寺さん、ありがとうございます。 

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