ふらっと入った古本屋で『国家成立の謎』という古本を購入した。1979年に行われた朝日新聞社主催「古代史シンポジウム国家成立の謎」をまとめたもので、司会:松本清張、講師陣:直木孝次郎、井上光貞、杉山二郎、西島定生、森浩一、大塚初重というものだ。
古代史の勉強をすると、半分ぐらいは「研究史」のようなもので、誰それはこういう理由を述べて文献をこのように解釈した、誰それはどこそこの遺跡出土品からこのように解釈した、というようなことが多いのだが(という意味では論争史か)、そういう意味でこの本の司会及び講師陣は論争に耐えうる一流のメンバーだ。超一流といってもよいだろう。なお多くの先生方が今は鬼籍に入られた。
しかも、有名な稲荷山鉄剣の銘文が発見(解読)された翌年のシンポジウムであるから、4世紀、5世紀、6世紀の日本と東アジアについて講師陣が熱く討論されている。私の感想では、古代史研究はこのシンポジウムの時代の後あまり飛躍はなく、このシンポジウムはある種のピークに似た討論だった。ただ、任那の諸問題について確たる答えはなく、その後も、私の勉強不足もありそこのところはよくわかっていない。
文字のフォントサイズも少し小さく、現代のフォントに比べて線が細く、老眼+乱視の身には読むのに非常に疲れたが、内容は充実していて楽しかった。
後日、新刊の書店に「美しい数学入門」というのを買おうと思って赴いたが置いておらず、仕方なく店内をぶらぶらしてみると、遠藤慶太著『東アジアの日本書紀』(吉川弘文館)というのが見つかった。大見出しだけ拾ってみると、〇天皇の年代記、〇東アジアの動向と日本書紀、〇百済史書と書記官たち、〇百済史書と日本書紀、で、まるで先のシンポジウムの続き(私の抱いた疑問の続き)のようなものだった。この本を見つけたときは、この書架に、”ああ古代人に引き寄せられたな”というか、”今の私は古代人に魅入られているぞ”というように感じてゾクッとした。確かに魅入られただけのことはあり、満腹感を覚える内容だった。
小さいときは全く興味がなかったが、永年暮らした堺でも奈良でも古墳は常に身近にあった。
あの古墳を築造した大王権は「国家」の萌芽なのか国家以前なのか。その鍵は本当に雄略か。この続きを考えると当分の間人生を楽しめる。
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