2020年3月4日水曜日

721人

 東アジアの仏教は、単なる宗教ではなく巨大な(漢字)文化体系であった。
 諸民族間で相互に影響しあい、かつ、それぞれの国で独自に発展し独自の文化を形成していった。
 宗教なんて古臭い迷信と観念だと切って捨てて、考えようとしない現代人もいるが、仏教を知らずして東アジアの文化や歴史を語ることはできない。

   それにしても新書一冊を読むのにこんなに時間を要したものはなかった。
 面白い新書なら1~2日で読み終えることもざらであるが、この新書は数か月(3~4か月?)かかった。
 私の場合はほぼ並行して数冊の本を読んでいるから、中には少し時間のかかる本もある。それに、あまりに面白い本はもったいなくて途中で休憩期間をおいてゆっくり読んだりもする。もちろん、買ったのが失敗だったという本は途中で捨てることもある。

 しかし、それにしてもこんなに時間のかかった本も少ない。
 そうであれば、熟読をして全編頭に入ったかというと全くそうでもなく、前半の方はもう忘れてしまっている。情けない。
 面白くなく捨ててしまいそうなのを無理やり読んだわけでもない。

 では何故そんなに時間がかかったかというと、あまりに多くの人物(主に僧)が登場して、「誰それが何時こんな経論を書いてこんな主張をした」「誰それが何時こんな主張をして誰それのこれこれの論をかくかくの主旨で批判した」というようなことが多くて、高齢者の我が頭脳では追いかけられなかったからである。
 巻末に人名・仏名・神名の索引があったので数えてみたら、なんと721名であった。仏名・神名はほんのわずかで圧倒的には僧の名前である。
 その721人がどう言った、どう主張したという話が延々と続くので、1ページ読むのが進まなかった。
 それが、釈尊以前のインドから出発して、古代、中世、近世、近代まで続いて記されている。

 この本は今後通して読み直すことはなく、「事典」として使うだろうが、著者の熱意だけは伝わった。
 石井公成著『東アジア仏教史』岩波新書、疲れた。

   桃の日や朝ベランダに初音聞く

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