2017年12月4日月曜日

森友問題の最新の状況

 森友問題の最新の状況について、宮本徹衆議院議員(共産党・東京・比例)のブログが非常によくまとまっていると思ったのでご紹介したい。

 森友学園疑惑、この1週間の論戦で国が認めたこと。そして私の推察 2017-12-02 宮本徹

 森友学園への国有地払い下げをめぐる疑惑で、会計検査院が国の値引きの根拠となったゴミ撤去費用の見積もりは根拠がないと指摘する報告を発表して1週間あまりがたちました。会計検査院の報告は本当によく調べてあり、これまでの国のあらゆる説明に根拠がないことをひとつひとつ指摘しています。会計検査院の指摘をうけて、国会の論戦は、通常国会で展開されたゴミ撤去費用の根拠を追及する段階から、なぜ根拠のない撤去費用が見積もられたのか、通常国会閉会後にあいついで、報道された音声データや内部資料などをもとに追及する段階に入っています。

 すべてを知っている籠池氏は拘置所に拘留中、一方、国はすすんでつまびらかに明らかにする立場にたちません。そこで、国有地払い下げ交渉時の森友学園側の弁護士にお話をうかがえないかとお願いしましたが、話さなければいけないところに対しては話していますが、守秘義務があるのでメディアの取材も含めて、この件についてはお断りしているということでした。 ただその際、「ABCのうちACが明らかになっていれば、Bは推測できる」という一般論としてのお話がありました。

 この間、報道された内部資料等を時系列で並べると、欠けたパズルのピースも見えてきます。

(1)3月24日 森友学園側が国有地の買い取りを要望。

報道 「この日の協議で金額をめぐるやり取りが行われていたことが大阪地検特捜部の調べなどで明らかになっています。それによりますと、この協議で財務局側が学園側に対し、「いくらまでなら支払えるのか」などと、購入できる金額の上限を尋ね、学園側はおよそ1億6000万円と答えたということです」「この協議の場にはその後、ゴミの撤去費用の見積もりを直接担当した大阪航空局の職員も同席していたということです。」(11月28日、NHK報道)

国会答弁 「大阪航空局職員」の同席認める。「具体的な金額についての記憶はありませんが、大阪府の認可との関係で借り入れの金額に限度があることから、買う場合の金額にも限度があるとの話は森友学園側からはありました。」「(具体的な金額のやりとりについては)肯定も否定もできない」(12月1日衆院財務金融委員会 太田理財局長)

 → 「買う金額の限度がある」という話がでたことを事実だと政府は認めたわけですが、「限度がある」という根拠がこれだけ具体的に説明されたやりとりでは当然、限度額は具体的にいくらなのかでていないと不自然です。政府が都合が悪いところは「記憶はない」というのはいつものパターンですが、事実があったのことを否定できないので、「記憶はない」と言い逃れています。

 近畿財務局職員に加え、大阪航空局職員がこの場に同席していたということは意味があります。大阪航空局はその後、ゴミ処理費用を約8億2000万円で見積もることになりますが、この協議の場に同席していたということは、学園側の支払い能力に合わせて、ゴミ撤去費用を逆算して見積もることが可能な立場だったということを示す重要な事実です。

 あの国有地は森友学園への貸付賃料を決める際におこなわれた不動産鑑定で、この協議の約1年前の2015年4月27日に、約9億3000万円(厳密には9億2966万6000円)と鑑定されていました。この不動産鑑定価格の9億3000万円と森友学園側の支払い能力1億6000万円を比べれば、どの程度の減額をすれば森友学園側の支払い限度額内になるかは小学校で習う引き算でできます。(もちろん、1年で土地価格の変動という要素もあるし、不動産鑑定士によって鑑定の若干の幅があることも予想されますので、そうしたことも一定考慮して減額幅を定めていったのではないでしょうか。)

 国有地の払い下げ価格を森友学園が希望する支払い限度額にするためには8億円前後という巨額の減額が必要だということがすぐにわかります。この巨額な減額をおこなうために、「9・9メートルの深さのゴミ」という架空のゴミという「ストーリー」をつくっていくことになります。

(2) 3月下旬の協議 「9メートルの深さのゴミ」のストーリーの口裏合わせ
報道 
音声データ 国側の職員「3メートルまで掘っていますと。土壌改良をやって、その下からゴミが出てきたと理解している」「その下にあるゴミは国が知らなかった事実なので、そこはきっちりやる必要があるでしょうというストーリーはイメージしている」
 工事業者「3メートルより下からは語弊があります。3メートルより下から出てきたかどうかはわからないですと伝えている。そういう風に認識を統一したほうがいいなら我々合わせるが、下から出てきたかどうかは、私の方から、あるいは工事した側から確定した情報として伝えていない」
国側職員 「虚偽のないようにあれが大事なので、混在していると。ある程度3メートル超のところにもあると。ゼロじゃないと」「そんなところで作りたい」(音声データ 9月11日、関西テレビ「報道ランナー」)

3月30日の籠池夫妻と森友学園の弁護士、設計会社、施工会社の4社で打ち合わせの際のメモ
「できる限り低い金額で買い取りたい→航空局も同意」「航空局・財務局→彼らのストーリー 調査でわからなかった内容で瑕疵を見つけていくことで価値を下げていきたい」
 「9メートルの深さまで何か出てくるという報告を(するよう)、財務局から学園サイドに言われている」(8月3日、報道ステーション)

政府答弁 「報道されている音声データは、平成二十八年の三月下旬から四月ごろに森友学園側を訪問した際のやりとりではないかというふうに思われます。平成二十八年の三月十一日に、新たな地下埋設物が出てきた旨の連絡が森友学園側からあり、三月二十四日には、森友学園より、新たな地下埋設物の撤去費用を控除した価格で本件土地を購入したいとの要望が出され、それを踏まえて、本件土地を売却する方向で森友学園との打ち合わせに臨んでいたところでございます。地下埋設物の撤去費用を見積もるためには資料が必要であり、三メートルより深いところから出てきたものにつきましては新たな地下埋設物になるとの認識のもとで、必要な資料の提出をお願いする旨の話をしてございます。
 ただ、報道を聞いておりますと、こういう認識を伝える表現としてストーリーという言葉を使っておりますが、それは大変適切でなかったというふうに本人も申しております。
 いずれにいたしましても、先方とはさまざまなやりとりがありましたが、新たな地下埋設物の撤去費用を見積もるためには資料が必要であるから、さまざまな資料の提出をお願いしていたということでございます。」(11月28日、予算委員会、太田理財局長)

 → 音声データがメディアで報道されたもとで、政府も、音声データの存在は否定できなくなり、この音声データが本物であることを認め、「ストーリー」という言葉を使ったことについては、適切でなかったと釈明せざるをえなくなりました。ただ「口裏合わせ」と自ら認めるわけにもいかず、「必要な資料の提出をお願いしただけで、口裏合わせではない」と苦しい答弁を繰り返しました。
 しかし、音声データを事実と認めた以上、「口裏合わせではない」と1万回繰り返しても、9メートルまで深いところにゴミがあるという口裏合わせをおこなっていた事実は消えません。

 「9メートルまでの深いゴミ」は、いったい誰がいいはじめたのか。私は、12月1日の財務金融委員会で、「学園側か、業者側か、国側か」とただしたところ、太田理財局長は「国として総合的に判断した」と述べ、学園側や業者側が主張もしていないのに、国が決めたことだと認めました。まさに9メートルの深さまでのゴミというのは、国が主導して作った作り話ということです。

 音声データでは、業者の側は「3メートルより下からは語弊がある。」「3メートルより下からでてきたかどうかはわからない。」「9メートルというのわからない。」といっているのに、国の側が9メートルまでゴミがあることにしようと迫っています。国がないものをあることにしようとした理由は、架空のゴミの存在をつくりあげないと、森友学園側の支払い限度額内に価格を下げることができないという判断だからと想像されます。


(3)4月9日~10日 設計業者「データで産廃が3メートル以深ではない」

報道 4月9日から10日にかけて交わされた設計業者と学園の弁護士(当時)とやりとり
 設計業者「ボーリングデータで産廃が3メートル以深ではない。正論で負けてしまいそう」
 弁護士「提出はやめましょうか」
 設計業者「資料は抹消しました」(9月12日、毎日新聞)

→ 私もこのメールのやりとりを確認しましたが、ボーリングデータを国に提出するかどうかのやりとりで、ボーリングデータをだせば、不動産鑑定士に3メートルより深いところにゴミはない正論でやられるのではと懸念するやりとりをしています。
 このやりとりをみても、3メートルより深いところにゴミはそんなにないということは、業者も学園側も共通認識だと思われます。

 ちなみに、さらなるやりとりをへてボーリングデータは資料としては提出されています。そして、不動産鑑定士は、会計検査院の報告書に記載されているとおり、航空局のおこなった「ゴミの撤去・処分費用の概算額」は、依頼者の推測にもとづくものが含まれているといって、不動産鑑定価格に使用していません。

(4)4月14日 国土交通省大阪航空局がごみ撤去費約8億円と算定

(5)5月18日 近畿財務局音声データ
報道 籠池理事長(当時)「ゼロ円に近い形で払い下げをしてほしい」「1億3000万円がうんぬんというよりもグーンと下げていかなあかんよ」
近畿財務局担当者「それよりも安い値段はもう到底できない」「理事長がおっしゃる、0に近い金額まで私はできるだけ努力する作業をやっている」

政府答弁 「御指摘の財務局職員の発言に関する音声データ は、四十五分程度で、全体が公開をされておりま して、昨年、平成二十八年五月半ばごろのものと 思われますが、その内容に関して近畿財務局の職 員に事実関係の確認を行った結果は以下のとおり でございます。 まず、国として有益費の一億三千万円を支払っ ている以上、それを下回る形での売却はこの土地 に関する収支がマイナスになるということを意味 し、国としてそのような対応をとることは考えら れないという趣旨の話をしてございます。」「いずれにいたしましても、先方とはさまざまな やりとりが行われましたが、不動産鑑定評価額が 出る前に先方から買い受け希望価格が提示された という認識はございませんし、当方から売却価格 を提示したということもございません。 」(11月27日、太田理財局長)

→政府は音声データの存在を認めました。「ゼロ円に近い形で払い下げをしてほしい」とはっきり音声にあるのですから、「価格交渉」がなかったとするというのは、苦しい答弁です。過去の佐川理財局長の「先方からいくらで買いたいという話はない」といった答弁はうそだったということになります。

 ただし、この5月18日は、時系列でいうとゴミ撤去費用が見積もられた後、不動産価格は不動産鑑定士が鑑定作業中。この時点で本来の意味の「価格交渉」が成り立つためには、国側が不動産鑑定士の鑑定作業に関与しなければなりたたない段階だと思われます。しかし、不動産鑑定士は会計検査院の報告にあるように、航空局のゴミ撤去費用について鑑定価格にいれていないなど、中立的に鑑定をおこなっていると思われます。この5月18日時点での籠池氏らの働きかけは、その後決まる買い取り価格には影響していないのではなないかというのが私の推察です。

 すると、この音声データで、近畿財務局職員が発言している「0に近い金額まで私はできるだけ努力する作業をやっている」というのはなにをさしているのでしょうか。

 不動産鑑定の発注位に際して、国はゴミ撤去処分概算額と軟弱地盤対策費を考慮して不動産鑑定評価をおこなうと条件をつけていました。そして大阪航空局が算出したゴミ撤去処分費用約8億2000万と軟弱地盤対策費5億8492万を示していました。おそらく国側はこの二つを盛り込んで不動産鑑定をおこなえば、1億6000万円はもちろんのこと、国として売り払う最低価格の1億3200万円(有益費として先に森友学園に支払っていたもの)を下回ると見込んでいたのではないでしょうか。それが「0に近い金額まで私はできるだけ努力する作業をやっている」という意味なのではないか、というのが私の推察です。

(6)5月31日 不動産鑑定士が国有地の評価額を9億5600万円と査定

(7)近畿財務局が学園側に売却額1億3400万円と提示(不動産鑑定価格に、ゴミ撤去処分費用を差しひいたもの)


 かけたパズルのピースは推察でうめました。埋まっていないピースは、なぜ、国有地の払い下げにあたり、架空のゴミまで設定して、森友学園の支払い限度額内のただ同然にまで下げていったのか、この動機です。政府は損害賠償請求のおそれからこういうゴミの見積もりをおこなったといいますが、業者も深いところにゴミはないと言っていたもとで、架空ゴミを見積もらなかったからといって損害賠償請求で負けるはずがありません。結局、安倍昭恵氏の存在があるということなのでしょうか。あるいは、損害賠償請求されたら負けてしまうような、国民に説明していない、隠された国側の瑕疵があるのでしょうか。音声データが事実と認めた以上、説明する責任は国の側にあります。

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