2020年2月8日土曜日

圧力一辺倒の結末

   北朝鮮による拉致被害者有本恵子さんのお母さんが亡くなった。ご存命中に問題が解決せずどれほど辛かったかと思うと胸が痛む。
 そもそも北朝鮮による拉致問題を昭和63年に国会で取り上げ、梶山静六国家公安委員長に「関与濃厚」との答弁を初めて引き出したのは共産党の橋本敦参議院議員だったし、当時の被害者家族の運動に一番寄り添い努力してきたのも橋本議員をはじめとする共産党だった。
 それを「反北朝鮮キャンペーンに使える」「結果として右翼的政権の支持キャンペーンに使える」と邪な思惑で利用したのが安倍政権である。
 そのあたりの経緯は元家族会副代表の蓮池透氏(蓮池薫氏の兄)の著作にも「家族の気持ちとは別に、右翼や自民党の選挙集会などに利用されていった」と詳しい。

 近年は、安倍政権による「対話のための対話はしない」という圧力一辺倒政策で、口先だけの「解決に努力する」というフレーズばかりが繰り返されるだけで、まったく外交努力がなされず家族の願いは放置されてきた。
 安倍首相の頭越しにトランプが金正恩と対話するようになってから、「あらゆる努力」と言い始めても後の祭りになっている。
 そういう意味で、安倍政権と安倍首相の外交は、無策というだけでなく、口先だけで被害者の心をもてあそんだ罪は大きい。
 安倍政権を支持する右翼の人々には何が愛国心なのかと問いたい。

 私は、西谷文和氏の『西谷流地球の歩き方』(かもがわ出版)を読んでいる。すべて命がけの現場主義であるだけにその一言一言が重く響く。
 長年の経済制裁で貧困状態のイランから、石油収入で裕福なイラクのスレイマニアに逃げてきた18歳の娘さんの話も、しかし実際は・・・。
 一口に「経済制裁」と言うけれど、制裁下にあっても独裁者は裕福な暮らしを続けていて、「経済制裁」は結局庶民生活を破綻させている。「経済制裁」で泣いているのは国の指導者ではなくイランや北朝鮮の「普通の人々」だと氏は述べている。
 これが現実なのだろう。

 「圧力一辺倒では解決しない」。この言葉をもっともっと大きな常識、世論に育てる必要があろう。
 ちなみに、戦争はそれに輪をかけたような愚策だろう。中東をぐちゃぐちゃにして、IS(イスラム国)のような鬼子を産んだのは米欧の軍事介入であった。
 地球環境の破壊という点でも一番の原因は戦争ではないか。
 「青い議論」と言われようが、理性的に見て外交以外に解決の策はない。
 幸か不幸か、一般に中東での日本の評判は悪くない(小泉以降悪くなりつつあるが)。(中国はシリアのアサドを助けていて評判は良くないらしい)。
 安倍政権を退場させて憲法9条に基づく外交を展開するならば、日本は世界の調停役になれるのに。

   太陽と北風君は今もいる

1 件のコメント:

  1.  安倍政権の北朝鮮政策だけでなく、国連も含めて進められている経済制裁という対応を冷静に分析・評価する必要がないでしょうか。

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