藤井一至著光文社新書『土 地球最後のナゾ』のサブタイトルは、「100億人を養う土壌を求めて」で、結論を言えば、地球には広い土地があちこちにあるが、人類の食料を賄える農業に適する土、土壌は極めて限られているという話であった。
全くの門外漢で、ただ書店で手に取っただけの本だったが、門外漢の分だけ新鮮な知識に追い回された。
地球の土はたったの12種類しかない。その中には永久凍土や砂漠土もあり、肥沃な『チェルノーゼム(黒土)』はウクライナからロシアの南部、そして南北アメリカ大陸の一部にしかなく、次いで肥沃な『黒ぼく土』は日本列島にしかないというのには驚いた。
そんな貴重な『黒ぼく土』の地で農業は嫌われ、耕作放棄地が広がっている。孫や曾孫などの人類はどうなるのだろうと心配する。付け加えれば「ヨーロッパのパン籠」と称されるウクライナには爆弾が撃ち込まれている。
本としては、世界中の土壌を訪れ研究する経験談も面白い。
「土を掘って調べるのだ」と言っても入国審査で信じてもらえなかったり、「あの日本人が土を掘っているのだから、ほんとうはものすごく貴重なものを探しているに違いない」と現地の人が掘り始めるなど、けっこう笑えながら勉強になった。
自然農法だなどと勝手に標榜して、基本的には枯れ葉や枯草で家庭菜園をしている私は宇宙の中でとは言わず、世界中でごく一握りの特権階級の貴族らしい。どうだ都会人! 植物工場で100億人が賄えるなどと夢を見ていてよいか。

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