2023年8月25日金曜日

綴れ刺せ蟋蟀

   草むらの歌手がキリギリスからコオロギに代わりつつあることは先日書いたが、そのコオロギの代表選手はツヅレサセコオロギである。

 ツヅレサセコオロギは「聞きなし」ですぐわかる。
 本には「肩刺せ 裾刺せ 綴れ刺せ」と聞きなすと書いてある。
 衣服などの「綴れ」を補修(綴くろい)して秋冬に備える様にと鳴いていると・・・。

 私は亡くなった母親から、「肩刺せ 裾刺せ 寒さが来るぞ」と聞きなすと教わってきた。
 「肩刺せ 裾刺せ 綴れ刺せ 肩刺せ 裾刺せ 寒さが来るぞ」と続けると、より一層声に近づく感じがする。
 「肩刺せ 裾刺せ もうすぐ冬だ」という土地もあるそうだから、「寒さが来るぞ」も広く聞きなされていたのだろう。

 だいぶ以前にこの話をしたときに、薩摩出身の方は「肩刺せ 裾刺せ おさんどんの尻刺せ」だったと語ってくれた。ちょっとエッチなユーモアだったのだろうか。それとも「夜なべで針仕事をするおさんどん(女中さん)が疲れて眠くなるのを叱る」文句なのだろうか。

 「母さんの歌」などと一緒に、こんな聞きなしも遠からず死語辞典行かもしれない。
 ツヅレサセコオロギの聞きなしについて、「私は親からこう聞いてきた」というような記憶があればコメントが欲しいものだ。

 それにしても、熱中症注意報を聞きながら「寒さが来るぞ」もないものだ。それだけ地球がおかしくなってきているのかも。

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