2020年8月3日月曜日

朝の蜩は涼しくない

玉蝉(唅蝉)
   養老孟司さんの本の中に虫の声について「欧米人は音として捉えるのに対して日本人は言語脳で受け止める」というのがあって日本人の虫好きを語っていたが、加納康嗣さんは本で世界中の「鳴く虫を楽しむ」文化を豊富に紹介されているから、欧米その他諸外国の国民があながち虫音痴でもなさそうだ。
 ただヨーロッパの北の方では鳴く蝉がいないらしいから、日本映画の蝉しぐれを雑音と聞いてしまうという話は有名だ。
 「鳴く虫を楽しむ」という中の「虫」に普通は蝉は入っていないが、唯一例外は蜩(ヒグラシ)ではないだろうか。

 私は小さい頃海に近い街中に住んでいたから蜩の記憶はほとんどない。大人になってから高原の鄙びた宿で夕刻にカナカナカナと聞いた折に、少し寂しいような気持になって涼しく感じたものである。
 この少し寂しいような涼しさというのは多くの人々に共感していただけるものだろう。

 ・・・8月2日の日の出前、窓の外で蜩が鳴いていた。
 さて、蜩が文字どおり日暮れにだけ鳴くものだと信じていた私が朝の蜩に驚いたのは、だいぶ以前に田舎の旅館でであった。
 旅館の主人は「朝の蜩の声を聴くと今日も又暑い一日が始まるのかとうんざりする」というのにも驚いた。「蜩の声は涼しい」という私の思いとは真逆の説があったのだ。
 そして8月2日は、体が不慣れだったせいか本当に暑い一日だった。

 不要な外出自粛で孫の凜ちゃんたちが我が家にやってきてビニールプールで遊んだ。
 その後、大人たちにはサザエの壺焼きとノンアルコールを出した。(私たちはビール)
 普通のおやつでは面白くないので海水浴に行ったつもりで、頭の中で潮の香を嗅いだ。

 ようやく梅雨が明けたところだが、もう7日には立秋だ。蜩が悲しく鳴くはずだ。
 ステイホームでも楽しみを見つけていかないと面白くない。

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