2020年8月18日火曜日

ラ・フォンテーヌの寓話

 フランス文学者・奥本大三郎著『奥本昆虫記』の「セミ」にイソップ物語の「アリとキリギリス」の話がある。
 この寓話は元々ギリシャ~小アジアあたりの民話であったものを、17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌが「ラ・フォンテーヌ寓話集」に取り入れたことからヨーロッパに拡がったらしい。そして(イソップがまとめたとされている)元々の民話は「アリとセミ」であった。

   ところが南仏を除く大部分のフランス以北にはセミがいない。そこで自身もセミを知らないラ・フォンテーヌは、冬になったセミにアリのところへ「穀物を少し貸してくださいな」と物乞いに行かした。
 この話はさらにセミを知らない中部から北部のヨーロッパ人のために、アリとキリギリスと翻訳され、ついに日本でもアリとキリギリスになって今に至っているらしい。

 なので「欧米では日本映画の蝉しぐれを雑音だという」テーマについて、通説の「日本人とヨーロッパ人では虫の声を聴き分ける脳の分野が違う」という以前に、そもそも木にとまっているセミ、樹液を吸っているセミを知らなかったのだという指摘は浅学の私には新鮮だった。

 さて今年は、お花見を中止してからこっち基本的にはステイホームの毎日で、知らぬ間に秋も立ちお盆も過ぎた。
 そんなもので、ハルゼミを聞いた覚えがない。その代わり夏には部屋の中からセミの声を注視(声)したので、ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミはしかと確認した。
 ああ、来春はハルゼミの声を聴けるハイキングぐらいには行きたいものだ。

1 件のコメント:

  1.  ミンミンゼミの声は少なくなっています。どうしてでしょう?
     それでも季節は回り、熱帯夜だというのにコオロギなどの秋の虫が鳴き始めています。早く涼しくなって欲しいものです。

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