2018年10月30日火曜日

日本史のミカタ

   本郷和人・東大史料編纂所教授に対して、井上章一・京大工学部卒で現国際日本文化研究センター教授が言う。
 「本郷さんは大河ドラマ平清盛で時代考証を担当されました。・・私が文句を言いたいのは・・平家の公達だけでなく、摂関家も宮廷の女房たちも標準語を話しています。・・ところが海賊や・・山中の追いはぎだけが関西弁。これに憤りを感じるのです」というところからこの本は始まっている。
 二人の対談で終始する「日本史のミカタ」(祥伝社新書)は読み物として非常に楽しかった。

 適当に摘んでみると・・・、
 隋書倭国伝にある「日出る処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙なきや」の国書に対して煬帝は「身の程を知れ」と返書を送っただろうが、きっと小野妹子が「なくなりました」と言ったのだろう。森友学園問題と一緒。とか・・、
 
 坂東の武士が都の宮廷にあこがれた魅力の一つは超一級の女官たちであった。しかし日本史のどこにもこの「おねえさん力」に触れられていない。とか・・、

 「平和な明治維新」というウソ・・と言って、禁門の変、北越戦争、会津戦争、西南戦争、竹橋事件等をあげていること・・、

 最近「日本が大好き」という動きが活発で何か怖い、「日本はすばらしい」「こんなに美しい国はない」といった声が大きくなり、中国や韓国を叩く動きも出てきた。夜郎自大なところが軍国主義時代の日本に似てきている。とか・・、

 日本の今後の進路について、明治維新のとき京都は「第二の奈良になってはいけない」と宣言したが、今日奈良の人が特別に不幸せだとは思えない。観光地として評価してもらえるチャーミングな国づくりで明るく健やかに奈良へ向かう道を選んだ方が精神衛生上も好い。とか・・、

 一般の歴史に関する書物にはない刺激的でクスッと笑える対話が楽しかった。
 こんな本も好い。

   うそ寒や歴史の本を閉じて寝る 

2 件のコメント:

  1. 面白そうですね。図書館で検索してみます。

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  2.  活字はいいですね。ネットの記事も参考にはなりますが、やはり書籍を読むと奥深いと感じます。
    時間と空間を一挙に広げるのが書籍ですね。それにしては老眼が辛い。

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