中東といえばジョージ・W・ブッシュ大統領による2003年イラク戦争のことを思い出す。
ブッシュは「フセインは(核兵器のような)大量破壊兵器を作って戦争の準備をしている」「アメリカは正確な情報を持っている」と公言してイラクに侵攻した。
ところが、イラクのどこからも大量破壊兵器やその製造工場は出てこなかった。
そしてフセインは殺されたが、その後イラクを含む中東の政治状況は無茶苦茶に悪化した。
そのとき日本の政府とマスコミは、100%、ほんとうに100%といってよいほど「フセインによる大量破壊兵器」を絶対的真実だとアナウンスした。
思い出してほしい。その当時、どのテレビ局が、どの新聞社が、「ブッシュの言っていることは嘘でないか」と言っただろうか。
後にそれは、ブッシュによる情報操作(フレームアップ)であることが明白にされ、そのことに当のアメリカも参戦したイギリス等も「誤りであった」と認めたが、日本は総括していない。
そこで話はフリージャーナリストのことである。
日本ではフリージャーナリストというと、週刊誌にガセネタを売り込む面々のイメージの方が強いかもしれないが、欧米ではフリージャーナリストが当たり前である。
日本の「社員ジャーナリスト」は例外で、欧米でいえば「よほど能力のない記者」ということになる。
「社員ジャーナリスト」が昇進するためには社の方針(上司)の意向に忖度できなければならないから、国境なき記者団による「報道の自由度」で日本が非常に低い評価である遠因はここにある。
今般、中東の過激派に拘束されていたフリージャーナリスト安田さんが解放されたが、その機会に自己責任論をぶつ人がいる。
しかし、以上に述べたように、社員ジャーナリストが行きたがらない危険地域で取材するジャーナリストが居なければ、私たちは再び三度ブッシュのときのように騙される。
当時は自衛隊は戦闘そのものには参加しなかったが「人道復興支援」に派遣され、従事した隊員中35名が在職中死亡(2007年10月末現在、防衛省)した。安倍政権下でならさらに海外派兵され大量に死亡することだろう。嘘の情報によってそういうことが起こりうる。
恥ずかしいがブッシュのとき、私も「ブッシュもブッシュだがフセインもフセインだろう」「核でなくても相当な非人道的兵器を作っているのだろう」とほゞ信じ込んでいた。
思い起こしてほしい。あなたはどうだったか。
結論を急ぐ。紛争地帯に取材に行くフリージャーナリストは尊い存在だ。彼らがいるからフェイクニュースを検証できるのだ。
あの日のように、ニセ情報で戦争に巻き込まれないためにも、口が裂けても自己責任などと言ってはならないと私は思う。
※ しりあがり寿さんの四コマ漫画を追加。朝日新聞『地球防衛家のヒトビト』。8月に安田さんのニュースがあった折り。秀逸。
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